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中級者以上結果発表

2024年5月20日週の兼題

南風(みなみ)

【曜日ごとに結果を公開中】

【類想】

選者コメント

夏井いつき

 傍題として、【南吹く・南風(みなみかぜ)・南風(なんぷう)・正南風(まみなみ)・大南風(おおみなみ)】を載せておりました。

 実は、兼題「南風」は、2015年に出題しています。

この時は「黒南風」「白南風」を使った句がかなり多く寄せられていまして、それを許容する形で選をいたしました。頁数の少ない季寄せなどでは、「南風」の傍題として「黒南風」「白南風」が載っているケースもあったからでした。


 今回、中級者コースの皆さんと再確認しておきたいことがあります。本選句欄の底本としている『カラー版新日本大歳時記』(講談社)には、それぞれ以下のような解説がなされています。


「黒南風」(傍題:くろばえ・荒南風)→仲夏

 六月、梅雨に入って、長雨が降りつづく頃に吹く南風のこと。湿度の高い風でもあるので黒南風と呼んだのは、いかにも浦言葉にふさわしい。(以下、略)


「白南風」(傍題:しろばえ・しらはえ) →晩夏

 梅雨の晴れ間、梅雨明けの間近な頃、あるいは梅雨が明け切ったときに、あたかも雲を一掃するように吹き渡る南風、これが白南風である。空は明るく夏到来にかがやき、吹く風もまた光の束になって眩しい。(以下、略)


 「南風」が「三夏」の季語、つまり、立夏から立秋前日まで使える季語であるのに対して、この二つの季語は、独立した季語として認識されていて、「黒南風」は仲夏、「白南風」は晩夏の季語なっているのです。

 

 中級ならではの学びを進めていく上で、少しずつ季語への理解も深めていきましょう。


【類 想】

〇 イメージ

 ・ 生命力 勢い はつらつ エネルギー

 ・ 明るさ 希望 エール

 ・ 郷愁(子供時代 思い出 初恋)


〇 南風とは

 ・ 荒々しい

 ・ 雨が近い 湿度が高い

 ・ まとわりつくような


〇 南風が吹くので

 ・ 〇〇が吹き飛ぶ 捲れる 揺れる

 ・ 洗濯物を干す よく乾く  魚も干す 干物ができあがる

 ・ 強い風のおかげでホームラン

 ・ 帽子がとばされる

 ・ 髪がぐしゃぐしゃになる 額や首筋に髪がはりつく

 ・ 波が立つ 荒れる

 ・ 潮の香が(風に)運ばれる


〇 南風が吹くころは

 ・ 草木が勢いよく育つ

 ・ 装いも夏らしく  → 半袖 Tシャツ 上着を脱ぐ サンダル

 ・ 夏らしい飲み物や食べ物  → ビール 炭酸飲料 ゼリー 氷菓 カレー スパイスの効いた料理など


〇 人は

 ・ 南風に立つ 

    → 山頂や丘から海を見る

    → そして深呼吸


 ・ 自転車を漕ぐ 立ち漕ぎする

 ・ 野球する(球児、大谷選手ネタなど多し) 観戦する

 ・ 漁に出る 釣りをする 

 ・ 大漁旗を掲げる 網を繕う


 ・(南風に背を押されて)新たなスタート 新たな一歩

 ・ 行列 列に並ぶ

 ・ 恋する 片思い 失恋


〇 南風が吹くのは

 ・ 島 岬 海辺 砂丘 砂浜

 ・ 海 

   → 沖縄 与論島、石垣島 江の島

 ・ 船上 甲板

 ・ 駅 線路

 ・ 野外フェス ライブ

 ・ 午後の教室 理科室や音楽室

 ・ 病室

 ・ 墓 墓碑 慰霊碑(のある場所)


〇 こんな取り合わせも

 ・ 砂 砂遊び 砂が手足につく

 ・ 錆(看板 錨 檻 トタン などなど)

 ・ アンカー 櫓 ロープ など(船に関連するもの)

 ・ 戦争 特攻隊

 ・ 異邦人 異国語

 ・ 墨 硯

 ・ 風見鶏

 ・ 恐竜 ティラノサウルス ゴジラなど


〇 その他

 ・ 〇〇の先の南風(トンネル抜けた先 岬の先 道の先など)

 ・(帆や洗濯物 シャツなどが)南風を孕む

 ・ 匂う  → 風そのもの 食べ物 街 人 などなど

 ・「南風」という名の列車(季語ではない……)

 ・ 開けた窓やドアから南風が


◆いつもお伝えしていることですが、類想に関しては、この季語ならではの類想もあれば、どんな季語でも出てくる類想・ありがちなフレーズもあります。類想というデータを自分なりに蓄積していくことも、効果的な学びです。



※今回の兼題「南風」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4167句、投句人数1653人となりました。以下、類想句の一覧です。

類想一覧(選外)

  • 南風吹く野外ライブのPA席

    源早苗

  • 南風子らの声高く響きけり

    平本文

  • 船泊まり過ぐる南風に気が逸る

    寝屋 士酔

  • 満員のアルプス席に南風

    ニッシャン

  • 南風やナンプラー入りタイ料理

    森一平

  • 風見鶏と大南風と大海と

    伊藤辰弥

  • 背より南風力になれり上めざす

    テラゴン

  • 霊山に南風うねるも動かざる

    市橋ふんちん

  • 南風吹くいつもの宿で一人飯

    佐藤 聰

  • 南風や餃子屋列は八番目

    さんざし

  • 慰霊碑の香煙煽る南風かな

    松葉学而

  • 南風宅配人の走り行く

    田中ようちゃん

  • 隧道を抜けて南風の伊豆の海

    羽住玄冬

  • 突堤に立ちて南風を体中

    笑松

  • タイカレー旨き屋台や南風

    小島やよひ

  • 南風ゆうるりと追う流れ雲

    山本蓮子

  • 南風唄ふ小さき島の島唄を

    sekiいつき組広ブロ俳句部

  • 海難の碑古りて南吹く

    遊泉

  • 木漏れ日に南風の音色ノスタルジー

    奏月 葉音

  • 南風吹くお囃子過ぎたアスファルト

    山地

  • 南風吹く咥え煙草の釣り人に

    つちや郷里

  • 南風に香る干物や伊豆の旅

    加藤水玉

  • 南風只今前線通過中

    くろべぇ

  • 地下鉄の階段出口南風くる

    國本秀山

  • 撫でようと猫すり抜けて南風かな

    三好一彦

  • 半島の風車グワンと南風吹く

    柊瞳子

  • 南風やデッキチェアーに寝そべつて

    古庄たみ子

  • 南風吹く初めて海に浸る吾子

    一の橋 世京

  • 五時間目南風が通るブラインド

    内田ゆの

  • 南風吹く墓より望む茅渟の海

    松元転石

  • ファインダーを覗く乙女にも南風

    小椋チル

  • 駅前に焼肉匂ふ南風

    井口あきこ

  • 南風や大谷球の軌道見し

    夏目たんちゃん

  • 同行二人墨書の笠へ大南風

    紫水晶

  • 朝霧駅潮の香混じる南風

    菅原ゆう

  • 洗い立てのシーツ掲揚みなみかぜ

    志きの香凛

  • 南風吹く駅舎下校の声に満つ

    松本厚史

  • 南風吹き竿を納めて帰路急ぐ

    香取扇公

  • 山城や南風に押され登りきる

    常然

  • 我ひとり人肌恋し南風

    石内宏明

  • 大南風中天の鳶揺るぎなく

    遅狐

  • 釣果待つ猫そこかしこ南風

    西田武

  • 岸壁へ南風を連れる下り坂

    小島神泉

  • 物干しに白ランニング南風吹く

    豚々舎 休庵

  • 木陰道抜けて犀川南風かな

    一雄

  • 子らの声来ては過ぎ行く南風かな

    月城龍二

  • 合唱終え肺で味わう南風の味

    山海動静

  • 満塁の走者ら南風駆け巡る

    森野翔

  • 民宿の錆びた看板南風に鳴く

    三無季生

  • 南風や江ノ電に満つ異国の薫

    竹春エリザベス

  • 南風来て大漁旗の見え隠れ

    琵琶湖のおばさん

  • 昼休み覆い被さる南風

    川辺世界遺産の居候

  • 独り旅スパイス香る南風かな

    美羽烏子

  • 南風進水式の紙テープ

    小藤たみよ

  • 廃校の池に命や南吹く

    海乃一夏

  • 大南風急げ急げと船が待つ

    秋谷 忍

  • 今日何しょ?カレーにするか南風

    季切少楽・いつき組広ブロ俳句部

  • 南風吹く竿のジーンズ風孕む

    円美々

  • 島目指せパドル漕ぐ背に大南風

    杼 けいこ

  • 石垣にもたれ南風に吹かれおり

    海月のあさ

  • 南風(なんぷう)が裾(すそ)をからかうグラウンド

    松平 時生

  • 半円に盛られチャーハン南風

    吉谷地由子

  • 命日にあの日の南風吹き渡る

    始の子

  • 髪のハネ気になりだした娘に南風

    云々 美雲

  • 移住の友南風(なんぷう)受けて朝散歩

    テレシア

  • 猫の耳尻尾を撫でる南風かな

    遥風

  • 大南風背を低くして漕ぐペダル

    霜川このみ

  • ページ繰るうつらうつらと南風

    アムゼルえりこ

  • 己が影追う吾れの背を圧す南風

    正念亭若知古

  • 炒飯と唐揚げ乗せる南風かな

    平山仄海

  • 首里城の広福門や南風

    山崎 かよ

  • 南風にスパイス香る古書の街

    雨李

  • 南風なり捻り鉢巻絞め直す

    勘太郎

  • 南風9メートルハウスの北を開け

    望月ぽん

  • 野に詠めば南風歳時記捲りけり

    佐藤俊夫

  • 潮の香を南風の運ぶ無人駅

    竹内ユキ

  • 南風やカレー掻つ込みまた海へ

    音羽凜

  • 自転車と強き南風に追い越さる

    森の真林

  • 立ち漕ぎで南風にむかう家路へと

    ゆかりん

  • 南風吹く辻の地蔵や代官町

    美濃仙人

  • ハーバーにカランカランと南風

    ナタデココ

  • なまぬるく南風流るる五限長し

    彩桜里

  • 南風満帆手繰る腕にも背中にも

    みしまはぐし

  • 南吹く窓辺に海の匂いかな

    北大路京介

  • 南風港夜景に恋の影

    道隆

  • 大南風ままならぬ100000の癖毛

    田季たまき

  • 失恋の傷を癒して南風

    日向大海

  • フリスビー投げる南風を纏わせて

    石本コアラ

  • 南風受け旅程変更奥入瀬へ

    藤田 侃

  • 南風より川面打ち合い波白瀬

    野山夕理

  • バス降りて磯の香せまる南風

    空心菜

  • 南風撲つポニーテールの汗解く

    赤木ありこ

  • 南風善し襟を開いて腹にまで

    杉と松

  • 湿度計ジリジリ上げる南風よ

    千曜 桜

  • ゆりいすの猫の背中に南風

    西野桃果

  • 南風舞う漁船の音は高らかに

    瀬戸ティーダ

  • 南風吹き込むコンビニの自動ドア

    春乃花柊

  • 南風や不快指数の高まりぬ

    池田  凜

  • 南風吹く五十年目のクラス会

    花空木

  • 南風吹く遠くの島の唄をのせ

    いこん

  • バス乗りて坂を南風と登りをり

    加納仁美

  • 模擬テスト前髪なでる南風や

    みしまちづる

  • パラ五輪目指す若人南風吹く

    伊江かつじ

  • 三回忌想い出連れて吹く南風(みなみ)

    道楽人生

  • 扉空け南風飛び込み深呼吸

    風花

  • 善通寺へと南風通る葉が揺れる

    哲山(山田 哲也)

  • 南風吹く恋の初めの微熱へと

    三休

  • ギアあげて目一杯漕ぐ南風

    渡辺宵雨

  • おさげの子南風にのせてホームラン

    山 ゆり

  • 放課後やチャリの背を押す南風かな

    だいごろう

  • 南風やここにはここの風吹きぬ

    壱太

  • ひと息のベンチにからむ南風かな

    島陽広

  • 玉砕の島は遥かに南風

    井上鈍句

  • 空高く飛行機競う南風

    玉野素人

  • 超極辛カレー食うやつ南吹く

    せいち

  • 船が来る南風わけ入り立ち漕ぎす

    文月蘭子

  • 山腹へ潮の香かすか大南風

    ももたもも

  • 補陀洛は心の中に南風吹く

    岡井風紋

  • 海峡の橋は渡れぬ大南風

    埼玉の巫女

  • 南風や人の群れ指す風見鶏

    桃姫

  • 野外ステージパウスカートへ南風

    向日葵姐、いつき組広ブロ俳句部

  • 外野飛球歓喜に変える南風かな

    わたり 和

  • ロックフェス爆音の中南風舞う

    ミント・スチュワート

  • 南風背に釣果空しく帰りけり

    おのまい

  • 側溝に腰高の草南風吹く

    坂本 羊雲

  • 大海は南風我なぶら追う

    みつき 夏

  • 南風吹く二塁打に沸く子らの声

    村橋 桂

  • 自転車を押せば南風の峠かな

    藤堂かたりこ

  • 大の字で実家の二階南風吹く

    雅 寝子

  • 木登りの笑顔の子らに南風

    荘司彩舟

  • 南風や島にひとつの信号機

    立川猫丸

  • 白雲や南風に孕む帆掛け船

    玲風

  • 愛犬のお鼻クンクン南風

    倉木葉いわう

  • 立ち漕ぎの乙女を阻む南風かな

    高橋 基人

  • 南風大漁旗揚げ漁船戻る

    佐野亦山

  • 気怠さを運んで南風寝を誘う

    大阪駿馬

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

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