類想一覧(選外)
南風吹く野外ライブのPA席
源早苗
南風子らの声高く響きけり
平本文
船泊まり過ぐる南風に気が逸る
寝屋 士酔
満員のアルプス席に南風
ニッシャン
南風やナンプラー入りタイ料理
森一平
風見鶏と大南風と大海と
伊藤辰弥
背より南風力になれり上めざす
テラゴン
霊山に南風うねるも動かざる
市橋ふんちん
南風吹くいつもの宿で一人飯
佐藤 聰
南風や餃子屋列は八番目
さんざし
慰霊碑の香煙煽る南風かな
松葉学而
南風宅配人の走り行く
田中ようちゃん
隧道を抜けて南風の伊豆の海
羽住玄冬
突堤に立ちて南風を体中
笑松
タイカレー旨き屋台や南風
小島やよひ
南風ゆうるりと追う流れ雲
山本蓮子
南風唄ふ小さき島の島唄を
sekiいつき組広ブロ俳句部
海難の碑古りて南吹く
遊泉
木漏れ日に南風の音色ノスタルジー
奏月 葉音
南風吹くお囃子過ぎたアスファルト
山地
南風吹く咥え煙草の釣り人に
つちや郷里
南風に香る干物や伊豆の旅
加藤水玉
南風只今前線通過中
くろべぇ
地下鉄の階段出口南風くる
國本秀山
撫でようと猫すり抜けて南風かな
三好一彦
半島の風車グワンと南風吹く
柊瞳子
南風やデッキチェアーに寝そべつて
古庄たみ子
南風吹く初めて海に浸る吾子
一の橋 世京
五時間目南風が通るブラインド
内田ゆの
南風吹く墓より望む茅渟の海
松元転石
ファインダーを覗く乙女にも南風
小椋チル
駅前に焼肉匂ふ南風
井口あきこ
南風や大谷球の軌道見し
夏目たんちゃん
同行二人墨書の笠へ大南風
紫水晶
朝霧駅潮の香混じる南風
菅原ゆう
洗い立てのシーツ掲揚みなみかぜ
志きの香凛
南風吹く駅舎下校の声に満つ
松本厚史
南風吹き竿を納めて帰路急ぐ
香取扇公
山城や南風に押され登りきる
常然
我ひとり人肌恋し南風
石内宏明
大南風中天の鳶揺るぎなく
遅狐
釣果待つ猫そこかしこ南風
西田武
岸壁へ南風を連れる下り坂
小島神泉
物干しに白ランニング南風吹く
豚々舎 休庵
木陰道抜けて犀川南風かな
一雄
子らの声来ては過ぎ行く南風かな
月城龍二
合唱終え肺で味わう南風の味
山海動静
満塁の走者ら南風駆け巡る
森野翔
民宿の錆びた看板南風に鳴く
三無季生
南風や江ノ電に満つ異国の薫
竹春エリザベス
南風来て大漁旗の見え隠れ
琵琶湖のおばさん
昼休み覆い被さる南風
川辺世界遺産の居候
独り旅スパイス香る南風かな
美羽烏子
南風進水式の紙テープ
小藤たみよ
廃校の池に命や南吹く
海乃一夏
大南風急げ急げと船が待つ
秋谷 忍
今日何しょ?カレーにするか南風
季切少楽・いつき組広ブロ俳句部
南風吹く竿のジーンズ風孕む
円美々
島目指せパドル漕ぐ背に大南風
杼 けいこ
石垣にもたれ南風に吹かれおり
海月のあさ
南風(なんぷう)が裾(すそ)をからかうグラウンド
松平 時生
半円に盛られチャーハン南風
吉谷地由子
命日にあの日の南風吹き渡る
始の子
髪のハネ気になりだした娘に南風
云々 美雲
移住の友南風(なんぷう)受けて朝散歩
テレシア
猫の耳尻尾を撫でる南風かな
遥風
大南風背を低くして漕ぐペダル
霜川このみ
ページ繰るうつらうつらと南風
アムゼルえりこ
己が影追う吾れの背を圧す南風
正念亭若知古
炒飯と唐揚げ乗せる南風かな
平山仄海
首里城の広福門や南風
山崎 かよ
南風にスパイス香る古書の街
雨李
南風なり捻り鉢巻絞め直す
勘太郎
南風9メートルハウスの北を開け
望月ぽん
野に詠めば南風歳時記捲りけり
佐藤俊夫
潮の香を南風の運ぶ無人駅
竹内ユキ
南風やカレー掻つ込みまた海へ
音羽凜
自転車と強き南風に追い越さる
森の真林
立ち漕ぎで南風にむかう家路へと
ゆかりん
南風吹く辻の地蔵や代官町
美濃仙人
ハーバーにカランカランと南風
ナタデココ
なまぬるく南風流るる五限長し
彩桜里
南風満帆手繰る腕にも背中にも
みしまはぐし
南吹く窓辺に海の匂いかな
北大路京介
南風港夜景に恋の影
道隆
大南風ままならぬ100000の癖毛
田季たまき
失恋の傷を癒して南風
日向大海
フリスビー投げる南風を纏わせて
石本コアラ
南風受け旅程変更奥入瀬へ
藤田 侃
南風より川面打ち合い波白瀬
野山夕理
バス降りて磯の香せまる南風
空心菜
南風撲つポニーテールの汗解く
赤木ありこ
南風善し襟を開いて腹にまで
杉と松
湿度計ジリジリ上げる南風よ
千曜 桜
ゆりいすの猫の背中に南風
西野桃果
南風舞う漁船の音は高らかに
瀬戸ティーダ
南風吹き込むコンビニの自動ドア
春乃花柊
南風や不快指数の高まりぬ
池田 凜
南風吹く五十年目のクラス会
花空木
南風吹く遠くの島の唄をのせ
いこん
バス乗りて坂を南風と登りをり
加納仁美
模擬テスト前髪なでる南風や
みしまちづる
パラ五輪目指す若人南風吹く
伊江かつじ
三回忌想い出連れて吹く南風(みなみ)
道楽人生
扉空け南風飛び込み深呼吸
風花
善通寺へと南風通る葉が揺れる
哲山(山田 哲也)
南風吹く恋の初めの微熱へと
三休
ギアあげて目一杯漕ぐ南風
渡辺宵雨
おさげの子南風にのせてホームラン
山 ゆり
放課後やチャリの背を押す南風かな
だいごろう
南風やここにはここの風吹きぬ
壱太
ひと息のベンチにからむ南風かな
島陽広
玉砕の島は遥かに南風
井上鈍句
空高く飛行機競う南風
玉野素人
超極辛カレー食うやつ南吹く
せいち
船が来る南風わけ入り立ち漕ぎす
文月蘭子
山腹へ潮の香かすか大南風
ももたもも
補陀洛は心の中に南風吹く
岡井風紋
海峡の橋は渡れぬ大南風
埼玉の巫女
南風や人の群れ指す風見鶏
桃姫
野外ステージパウスカートへ南風
向日葵姐、いつき組広ブロ俳句部
外野飛球歓喜に変える南風かな
わたり 和
ロックフェス爆音の中南風舞う
ミント・スチュワート
南風背に釣果空しく帰りけり
おのまい
側溝に腰高の草南風吹く
坂本 羊雲
大海は南風我なぶら追う
みつき 夏
南風吹く二塁打に沸く子らの声
村橋 桂
自転車を押せば南風の峠かな
藤堂かたりこ
大の字で実家の二階南風吹く
雅 寝子
木登りの笑顔の子らに南風
荘司彩舟
南風や島にひとつの信号機
立川猫丸
白雲や南風に孕む帆掛け船
玲風
愛犬のお鼻クンクン南風
倉木葉いわう
立ち漕ぎの乙女を阻む南風かな
高橋 基人
南風大漁旗揚げ漁船戻る
佐野亦山
気怠さを運んで南風寝を誘う
大阪駿馬
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
傍題として、【南吹く・南風(みなみかぜ)・南風(なんぷう)・正南風(まみなみ)・大南風(おおみなみ)】を載せておりました。
実は、兼題「南風」は、2015年に出題しています。
この時は「黒南風」「白南風」を使った句がかなり多く寄せられていまして、それを許容する形で選をいたしました。頁数の少ない季寄せなどでは、「南風」の傍題として「黒南風」「白南風」が載っているケースもあったからでした。
今回、中級者コースの皆さんと再確認しておきたいことがあります。本選句欄の底本としている『カラー版新日本大歳時記』(講談社)には、それぞれ以下のような解説がなされています。
「黒南風」(傍題:くろばえ・荒南風)→仲夏
六月、梅雨に入って、長雨が降りつづく頃に吹く南風のこと。湿度の高い風でもあるので黒南風と呼んだのは、いかにも浦言葉にふさわしい。(以下、略)
「白南風」(傍題:しろばえ・しらはえ) →晩夏
梅雨の晴れ間、梅雨明けの間近な頃、あるいは梅雨が明け切ったときに、あたかも雲を一掃するように吹き渡る南風、これが白南風である。空は明るく夏到来にかがやき、吹く風もまた光の束になって眩しい。(以下、略)
「南風」が「三夏」の季語、つまり、立夏から立秋前日まで使える季語であるのに対して、この二つの季語は、独立した季語として認識されていて、「黒南風」は仲夏、「白南風」は晩夏の季語なっているのです。
中級ならではの学びを進めていく上で、少しずつ季語への理解も深めていきましょう。
【類 想】
〇 イメージ
・ 生命力 勢い はつらつ エネルギー
・ 明るさ 希望 エール
・ 郷愁(子供時代 思い出 初恋)
〇 南風とは
・ 荒々しい
・ 雨が近い 湿度が高い
・ まとわりつくような
〇 南風が吹くので
・ 〇〇が吹き飛ぶ 捲れる 揺れる
・ 洗濯物を干す よく乾く 魚も干す 干物ができあがる
・ 強い風のおかげでホームラン
・ 帽子がとばされる
・ 髪がぐしゃぐしゃになる 額や首筋に髪がはりつく
・ 波が立つ 荒れる
・ 潮の香が(風に)運ばれる
〇 南風が吹くころは
・ 草木が勢いよく育つ
・ 装いも夏らしく → 半袖 Tシャツ 上着を脱ぐ サンダル
・ 夏らしい飲み物や食べ物 → ビール 炭酸飲料 ゼリー 氷菓 カレー スパイスの効いた料理など
〇 人は
・ 南風に立つ
→ 山頂や丘から海を見る
→ そして深呼吸
・ 自転車を漕ぐ 立ち漕ぎする
・ 野球する(球児、大谷選手ネタなど多し) 観戦する
・ 漁に出る 釣りをする
・ 大漁旗を掲げる 網を繕う
・(南風に背を押されて)新たなスタート 新たな一歩
・ 行列 列に並ぶ
・ 恋する 片思い 失恋
〇 南風が吹くのは
・ 島 岬 海辺 砂丘 砂浜
・ 海
→ 沖縄 与論島、石垣島 江の島
・ 船上 甲板
・ 駅 線路
・ 野外フェス ライブ
・ 午後の教室 理科室や音楽室
・ 病室
・ 墓 墓碑 慰霊碑(のある場所)
〇 こんな取り合わせも
・ 砂 砂遊び 砂が手足につく
・ 錆(看板 錨 檻 トタン などなど)
・ アンカー 櫓 ロープ など(船に関連するもの)
・ 戦争 特攻隊
・ 異邦人 異国語
・ 墨 硯
・ 風見鶏
・ 恐竜 ティラノサウルス ゴジラなど
〇 その他
・ 〇〇の先の南風(トンネル抜けた先 岬の先 道の先など)
・(帆や洗濯物 シャツなどが)南風を孕む
・ 匂う → 風そのもの 食べ物 街 人 などなど
・「南風」という名の列車(季語ではない……)
・ 開けた窓やドアから南風が
◆いつもお伝えしていることですが、類想に関しては、この季語ならではの類想もあれば、どんな季語でも出てくる類想・ありがちなフレーズもあります。類想というデータを自分なりに蓄積していくことも、効果的な学びです。
※今回の兼題「南風」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4167句、投句人数1653人となりました。以下、類想句の一覧です。