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中級者以上結果発表

2024年5月20日週の兼題

南風(みなみ)

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 南風やスナメリの噴くぬるい水

    にゃん

    選者コメント

    夏井いつき

     「スナメリ」は、小型のイルカの仲間。水族館のイルカショーか、イルカに会うツアーかもしれません。「南風」が吹き歪ませた「スナメリ」の噴く「ぬるい水」を、私たち読者もありありと追体験させられる作品でした。
  • 洞窟は波と南風の鳴きて碧

    いさな歌鈴

    選者コメント

    夏井いつき

     「洞窟」の中に打ち寄せてくる「波」、生臭く潮臭く吹き込んでくる「南風」。私の故郷愛南町由良岬の突端にある洞窟エビウドが、生々しく浮かんできました。「鳴きて碧」の光の屈折までもが、実に鮮やかに。
  • 江ノ島の犬南風をがぶ飲みす

    千歳みち乃

    選者コメント

    夏井いつき

     「江の島の犬」が、ガウガウ吼えているのでしょうか。その様子を、「南風をがぶ飲み」しているようだと捉えた点に独自性があります。湿気を含んだ海からの風ならではの「がぶ飲み」に違いないと、納得しきりです。
  • 反対派の漁師と南風と罵声

    赤馬福助

    選者コメント

    夏井いつき

     「反対派」の一語が、事態を想像させるに足る働きをしています。「漁師」という人物、「南風」という季語、「罵声」という音と感情。これらを並べただけなのに、私の脳裏には辺野古の海に吹き募る「南風」がありありと見えてきました。
  • 南風や舳綱が錆を削ぐ匂ひ

    一斤染乃

    選者コメント

    夏井いつき

     「舳綱(へづな)」とは、船首の舫い綱。「南風」の起こす波に揺らぐ船、その船を岸に繋ぐための「舳綱」はぎいぎいと揺れています。錆の匂いを描いた句は様々ありましたが、「錆を削ぐ匂ひ」という感じ方が、生臭い「南風」のリアリティとなっています。
  • 貝塚に牙の釣り針大南風

    げばげば

    選者コメント

    夏井いつき

     「貝塚」の貝殻に混じって、獲物の「牙」で作った「釣り針」を見つけたのでしょうか。この針を手に、古代人たちが海の獲物に挑んでいた遥かな時代。その頃と同じ「大南風」の中に立つ現代人の感慨とは。
  • アリクイの垂るる目脂や南風

    みづちみわ

    選者コメント

    夏井いつき

     「アリクイ」は、特異な長い鼻には似合わない、可愛い円らな眼をしています。が、そこに垂れている「目脂」に気づいたとたん、「南風」の生臭い湿気を感じとったのでしょう。その感覚が、中七「や」の詠嘆に託されています。
  • じつとりと南風生肉吊るす市

    陽光樹

    選者コメント

    夏井いつき

     海外の海辺の市場を想像しました。「じつとりと」という言葉は、季語「南風」の描写でありつつ、「生肉」の乾いていく表面の様子だったり、「市」の人々の気怠い表情などを思わせて、実に巧みな働きをしています。
  • 怒号飛ぶコンテナの裏大南風

    ふもふも

    選者コメント

    夏井いつき

     コンテナを積み込む港。コンテナの裏から聞こえてくる怒号は、危険と隣り合わせの積み込み作業。折しも吹きあがる「大南風」に、コンテナがぐらりと揺れたのでしょうか。「大」の一字が、しっかりと効いている作品です。
  • 叩くならボンゴかコンガ南風

    佐藤香珠

    選者コメント

    夏井いつき

     「南風」の中で楽器を叩くとすれば、「ボンゴかコンガ」という発想が愉快です。「ボンゴ」は胴の短い桶型の太鼓、「コンガ」は細長い樽型の太鼓。どちらも、南洋から吹き始める「南風」を囃し立てるかのような根源的な音です。

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