【佳作】
南風に傾き佐渡へ定期便
新濃 健
僧形のふたり船待つ南風かな
ひだ岩魚
うつろ眼の犬の涎の伸ぶ南風
冬のおこじょ
南風や海は気ままな昼休み
主藤充子
ただならぬ南風漁師がまた叫ぶ
タケザワサトシ
艫も帆も知らない星座南風吹く
沼野大統領
南風吹く浜辺の肥料混合器
居並小
鴎飛び交う南風のヘルシンキ
ぐりぐら京子
やちむんに赤絵の魚紋みなみ風
木染湧水
南風や売られし豚の背にマーク
アンサトウ
ヌクマムの香る賄い南風吹く
万里の森
テトリスな埋立地南風の匂い
シュリ
シロサイは餌場に着きぬ大南風
百瀬一兎
みなみかぜ鍵盤あまやかに黄ばみ
RUSTY=HISOKA
錆びついた南風が痛い陸の船
葦屋蛙城
横須賀の東郷像や南風吹く
HNKAGA
百年のパイン畑を継ぐ南風
沖庭乃剛也
散骨を終へて南風の返歌かな
ギル
二部落ちの校旗殴つてくる南風
江口朔太郎
掌に熱く異国のコイン大南風
黒子
ジオラマめく人よ砂丘を大南風
三月兎
南風や猿の神様あくびして
木公男8888
南風吹く岩船様の下り坂
西村小市
シャコタンの底擦るフェリー南風
電柱
南風や子の抗ひの礫受く
前田いろは
ブラインドひしゃぐ硫黄島の南風か
高山佳風
南風吹く漁船の底に百の酒
蜘蛛野澄香
反戦旗そよぎ南風の真正面
まんぷく
もやい綱ずしりと弛む南風かな
玉家屋
南風に積む郵袋の小豆色
さとけん
わたつみを南風哀詩として吹けり
常幸龍BCAD
砂浜の砂てふ骸南風吹く
坊 いち坊
マンホールに漣を聴く島南風
深山むらさき
南風を戦ふ風と思ひけり
しゅうへい
青銅の肌をしとらせ南風
遠山比々き
南風濃し市場は見ない魚ばかり
広木登一
南風や右舷のカジキ骨となり
立町力二
南風吹く河口を遠く藻屑蟹
香壺
南風吹く日はゴーゴーとチェロ鳴らし
夏の町子
南風より授かりし名と大言す
凪太
千畳の赫き塩田南吹く
井納蒼求
南風吹かせるリオのキリスト像
花屋英利
大南風鹹しあかるき鯨塚
夏風かをる
大南風引き込み線の錆赫し
小川さゆみ
三頭のライオン生まる大南風
ののはな誉茂子
神戸とふあかるき坂へ大南風
渋谷晶
南風や気管にひそやかな波長
平良嘉列乙
南風吹く木鼻の獏の眠さうな
露草うづら
しづもれる柱状節理大南風
亀田かつおぶし
大南風海象の牙縮むらん
くま鶉
南吹く大桟橋に飛鳥II
原島ちび助
南風や膝に体液淀みたる
桃園ユキチ
南吹く化石にも鱗の隆起
海音寺ジョー
みなみかぜ猫の死骸の平らけし
星埜黴円
南風にぬらりぬらりと火のにほふ
夏雨ちや
ガジュマルの下で開館待つ南風
富山の露玉
南風吹くロールシャッハに知らぬ人
椋本望生
錆臭き南風よ海は青くない
天雅
老雄は起てり南風へ銛掴み
龍田山門
シーサーの尾っぽは炎南風吹く
ぞんぬ
積木めく千のコンテナ南吹く
月見柑
南風やふぐりは熟れた桃のいろ
桜鯛みわ
係留のSHIRASEの錆を南風
久えむ茜咲
裸婦像の瞼は重し南吹く
城内幸江
南風吹く魚探は赫く鳴りにけり
世良日守
片脚の影なき禽へ南吹く
内藤羊皐
垂れ下がる倍音南風吹く架線
中島 真珠
炭酸のしみつく喉や南風急く
ぐ
南風吹く空引きのばす鳥の視野
眩む凡
海豹のあをき旋回南風吹く
ツナ好
がうがうたる漁労会議や南風びゆう
くさ
海南風ぶあつし鳥になき領土
葉村直
南風貝の眼の魔除け面
長谷川水素
南風吹く砂礫の浜の朝日かな
空 ひろ
貝殻のそれぞれ白し南風吹く
稲畑とりこ
南風吹くヒトは湿った有機物
きつネつき
玉砂利を常より昏くして南風
佐野明世
ぷはと息噴いて跳ぶシャチ大南風
樋口滑瓢
抱かれたるコアラは真顔南風
板柿せっか
海堡に二つの翼大南風
西川由野
泥染めの干したる糸へ南風
飯村祐知子
マングローブ明るしみなみかぜみなみかぜ
古瀬まさあき
南吹く沖のトウゾクカモメ疾し
中岡秀次
塩っぽい南風ガレットほろほろろ
丸山隆子
南風吹くプランクトンの魄重し
細川鮪目
ファスティングの淡路二日目の南風
赤尾双葉
ガジュマルの虚ろな気根南風吹く
翡翠工房
南風吹く神事の列の馬の鈴
みつれしづく
海堡の沈みし海を南風かな
浦野紗知
東京の夜の生臭き南風
ヤヒロ
花見潟に二万の墓や南風
ろまねす子
大南風切る長江のタグボート
ひでやん
東京湾南風に引つ掻かれて綺麗
玉庭正章
船といふ女性名詞にみなみかぜ
髙田祥聖
南風やここは鯨の見える丘
柚木みゆき
湯熨斗後の波めく絣南風吹く
有野 安津
頭上運搬南風は太陽のにほひ
七瀬ゆきこ
点滴と南風を受けて吸う煙草
鳥不驚
ペリカンのざんぶり呑める南風かな
綾竹あんどれ
シーサーの牙は欠けてる南風
白山一花
呉線の車両のどてっ腹を南風
ふくじん
白波の退屈を南風に代えて
嶋村らぴ
梛の木のこきふはみどり南風
きのえのき
ゴールして南風は馬に戻りけり
井上鈴野
南風や帆は口笛をとらえたか
そまり
南風つのる艀溜りは廃運河
すがりとおる
南風つよしイーグル銀貨うすつぺら
平本魚水
マウンドの南風に野手のぎゆと集ふ
南方日午
海南風プラスチックの咲く浜辺
熊谷 温古
捕らえたる獲物に臭気海南風
香依蒼
南吹く開港祭のファンファーレ
空豆魚
南風は古き友人縄文杉
だっく
南風や給水塔の鳩騒ぐ
堀雅一
南風壁に大きくチェ・ゲバラ
谷本均
ベンチみな海へ南風みな僕へ
いかちゃん
四日目の果実酒濁る大南風
星月彩也華
うかうかと雲の羽化孵化大南風
イサク
鎖とは涙の匂ひ南風吹く
亘航希
蛸壺の旗のゆらめき南風
えいぎょ
南風キリンは産気づいてきた
綱川羽音
南風吹くあちこち撓ふフラガール
大黒とむとむ
南風背に下る砂丘の先は海
庭野環石
ふぞろいに紡ぐ綿糸や南風吹く
としなり
G旗のひかるタンカー大南風
はぐれ杤餅
シケモクを咥へ南風の操舵室
竹田むべ
タンデムの傾ぐ南風の急カーブ
広瀬康
万国旗暴るや南風との帰港
足立智美
南風やしづかに閉づる捕虫葉
広島じょーかーず
種豚の大きふぐりや南風
清水縞午
南風吹く引けば帆となる鉋屑
ま猿
南風吹く鮒群れてみづふなのいろ
おかげでさんぽ
魚臭きゴム手てらてら南風
一港
営業の鞄にニーチェ南風吹く
松田寛生
臍の緒は慈愛の木乃伊大南風
古賀
出土する樹根は朽ちぬ南風
春野ぷりん
干物屋の上は作業場南風吹く
伊藤なおじい
大南風無傷ではない空の色
一走人
トンネルの先は函館南風吹く
俳句ファイヤー立志
ゆっくりと濁る煮汁や南風吹く
笑姫天臼
墓誌のごと堤防聳ゆ大南風
秋津穂 実
南風やビットの錆びの赤々し
久保田凡
大みなみ空港島の閉鎖さる
空井美香
避難塔上り南風を額に受く
はまゆう
南風や雲は孵化するとき平ら
樹海ソース
南風鸚鵡の話す外国語
富佐野ほろよい
番号の振らるる街路樹へ南風
北藤詩旦
ハシビロコウ南風に微動しをる膝
戸部紅屑
舌が這ふ草に南風を嗅ぎながら
トポル
じくじくと南風に臓器舐めらるる
村瀬ふみや
ご機嫌なレゲエ、カローラ、海、南風
千代 之人
南風吹く砂場シャベルは錆に病み
青井えのこ
南風さうざうしオープンカーの骸
咖哩亭 章之輔
コンコースはライチの匂い南風吹く
佐藤レアレア
次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!
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