類想一覧(選外)
終活や冬暖かく過ごす日よ
清鱒
冬ぬくし米寿の揃ふ同期会
夏目たんちゃん
冬ぬくし暫し幸福味わえり
佐藤 聰
冬暖か二階の窓に猫が見え
亀田荒太
久しなる初孫重し冬暖か
駄々
冬ぬくし主の前に欠伸猫
中野風鈴
冬暖か保母と散歩の乳母車
風間 燈華
冬暖か竿に揺れるや薄きシャツ
伊東まる
かしましき熟女の茶会冬ぬくし
柊瞳子
冬温し母はゆるりと大欠伸
羽馬愚朗
冬暖か優しき妻と父母のゐて
月城龍二
縁側にあくびする猫冬ぬくし
KOMA
出窓には目をつむる猫冬暖か
南全星びぼ
図書館の冬暖かな角テーブル
中川青嵐
ペダルこぐ足も軽やか冬暖か
香取扇公
冬暖かや頬杖の校舎窓
こきん
小劇場を出れば冬暖かな帰路
鬼殻
影法師冬暖かく日向行く
WEDA ASH
初孫と冬暖かき観覧車
さとう隆明
冬暖か入籍済んだ子らの顔
北の星
公園も冬暖かや吾子はしゃぐ
とんぶりっこ
志望校決めた長女に冬ぬくし
村上 継鳥
単身の夫帰り来る冬ぬくし
円美々
後ろ手の冬暖かや立ち話
吉野川
釣竿を磨く祖父の手冬ぬくし
千鳥城. いつき組広ブロ俳句部カナダ支部
ひとり居の冬暖かに詰将棋
ぶうびい
冬暖かこころもゆるみふわふわと
甘泉
たい焼きで遠回り冬暖かし
ナットク
初孫の産声響き冬暖か
和草雪月
友人の結婚を聞き冬暖か
本気のめんそ
城下道冬暖かの鯉寄せて
岡 草紅葉
庭の果や冬暖かと待ちわびし
蓮田初老
猫も我も冬暖かな庭にいる
入口弘德
雨音に猫の喉音冬ぬくし
とっきー
冬あたたか電車一駅分あるく
菅野まこ
碧眼二人のでつかいスーツケース冬暖
きゅうもんde木の芽
老々の日々の茶柱冬ぬくし
どゞこ
冬暖か山肌明し午前中
増田楽子
ほろ酔ひや冬暖かき帰り道
於大純
冬ぬくしお乳を求む吾子のいて
聞岳
冬ぬくし土は豊かに黒く濡れ
中岡秀次
お散歩カーに四人の園児冬あたたか
山崎 佳世
保育所のバギーに五人冬暖か
ももたもも
野良猫の屋根に昼寝や冬暖か
みやかわけい子
夜勤明け冬暖かなオフィス街
島田スパイス
這い這いの部屋から廊下冬暖か
鷹渡颯子
いざゆかむ冬暖かの日本海
みのやん
冬暖か車椅子押す孫の声
野田遊水
冬暖かその声探す亡き友よ
榊裕江子
ミドリガメ冬暖かく甲羅干し
小富古尾巣
思い出し笑いこらえて冬ぬくし
清水ぽっぽしゃん
冬ぬくしキッチンカーの最後尾
わおち
上着脱ぐ半袖姿冬暖し
太田看悟
駄菓子屋を冬暖かや親も子も
小室雅俊
冬暖か「生きる」詩人は逝きにけり
一井蝸牛
冬暖か愛犬伸びす吾も伸びす
平山千鶴
水中の発根すすむ冬暖か
云々 美雲
あいさつも冬暖かや一人旅
大久保一水
冬暖か背伸びの猫の目は細し
墨川杏太郎
一人旅冬暖かや寺社の街
森里綾里
冬ぬくしテントの前に焦げるパン
てつなお
冬ぬくしテラスがいいと君の云ふ
すかーてぃっしゅ
君見ると頬染まる僕冬ぬくし
矢澤恵
猫あくび冬暖かの中心地
江ノ島泰成
冬暖か十年ぶりの再会
雨李
冬暖かマッサージ機でまた眠る
ひろ志
冬暖かファーストシューズの一歩二歩
楽和音
冬暖か陰日向の妙猫惑う
なみは
犬歩き冬暖かや昼下がり
勘太郎
冬暖か初の年金和菓子買ひ
ぽんたちん
愛犬の寝そべる午後や冬ぬくし
森の真林
スーっと伸びた影は濃く冬暖か
青空豆千代
冬暖か乳飲む吾子の頬の赤
杼 けいこ
冬あたたか買物済ませ漫歩かな
理真
冬暖か会話の少ない老夫婦
一雁低空
故郷の縁に寝ころび冬ぬくし
卑弥呼
冬暖か遠回りする帰り道
おおにしまこと
吟行の仲間の意欲冬ぬくし
春よ来い
冬暖か毛布蹴る吾子夢の中
衆土売尽
冬暖の吾の娘率る佳き日かな
落句言
病室の冬暖かや空は青
剛柔
冬暖かささくれ包む君の息
麦野 光・いつき組広ブロ俳句部
車イス押せば笑顔の冬あたたか
石内宏明
孫連れて子らの帰郷や冬ぬくし
立野音思
犬は跳ぶ冬暖かき那須の庭
藤井俊季
縁側に蝿じつとゐる冬暖か
はまお
銭湯の湯気ののんびり冬暖か
詠頃
身軽なり冬暖かの待ちぼうけ
どらまにあ
冬ぬくしポニテらんらんけんけんぱ
富良里旅人
おひさまの香り感じて冬暖か
玉川緑風
冬暖か主居ぬとも花は咲く
橋本諒駿
冬暖か二センチ君と縮む距離
玉野 素人
戯れ帰る児らに陽が差し冬ぬくし
秋葉 翠
冬暖かばあばに寄り添う孫娘
瀬野広純
冬暖かキーウよせめて斯くあれ
須川えい
母といて吾子も成人冬暖か
武蔵野青空
車窓越し冬暖かや眠り猫
藤本 秋蝶
冬暖かリフトの上でうとうとと
玉川 徳兵衛
冬ぬくし心も溶ろける箱根の湯
福島 昇天
雨上がり土匂う冬暖か
花実人生
吾を駄目にするヨギボーや冬ぬくし
きいこ
コルセットはずし背伸びす冬ぬくし
増田 昴
冬暖かや汲みたる水もまろし
明後日めぐみ
みどり児のあくびしており冬暖か
はなだんな
冬暖か純喫茶の窓辺座す
ぐりぐら京子
冬ぬくしご無沙汰手紙心こめ
コイケキクエ
旗当番おはようの列冬暖か
小川テル子
校門でおしくらまんじゅ冬暖か
茶
冬暖か待合席の一つ飛び
丸山晴耕
へそ天を競う猫と吾冬暖か
清白真冬
冬ぬくしカレーパン待つ長き列
清瀬朱磨
冬暖か寝ぼけ眼の交差点
夜風しんのす
午餐後の猫の半眼冬ぬくし
雨霧彦(木ノ芽)
心ふる恩師のたより冬暖か
本久優千
冬暖か明日は明日の風が吹く
だけわらび
細き陽に仔のからだ伸ぶ冬暖か
福井桔梗
冬ぬくしイルミネーション出番待ち
スズランチイコ
冬暖に緑のすじの田んぼかな
みたぞの鈍幹
一心にミルク吸う孫冬暖か
嵐菜
あぜ道に六地蔵あり冬暖か
浅井カバ先生
生き物が日向に集う冬暖か
森野翔
カーポート冬暖かの欠伸りす
まー坊
畝立てて土は黒々冬暖か
妹のりこ
コンビニへアナ雪ドレス冬ぬくし
まろのり
冬暖か来た道そっと杖になり
黒木しるこう
老犬の里親となる冬ぬくし
恋瀬川三緒
合掌の冬暖かや母も笑む
小柳ジョージ
旧跡を訪ねて冬の暖かや
山乃尾乃道之翁
物忘れ夫も同じ冬暖か
りんごのほっぺ
バンクシーの真っ赤なハート冬ぬくし
みなみはな
冬ぬくしポニーテールのけんけんぱ
陶笛有味音
冬ぬくし郵便受けによき知らせ
リカ
誓ひ合ふ冬暖かき薔薇窓に
青野すみれ
冬暖かやほっぺたにご飯粒
つーじい
冬暖か赤い蕾の色ゆるむ
葉るみ
冬ぬくし握るラケット軽やかに
黒山万牛
自販機のHOTドリンク冬ぬくし
黒蜜きな子
冬暖か部屋干しやめ外に立つ
伊藤辰弥
退院日駅への小径冬暖か
北 晴風
冬暖か下校の子からこんにちは
たていし 隆松
頬よせて冬暖かやママの腹
文月蘭子
冬暖か一つ手前でバス降りる
さとの 白
うっかりと上司にタメ口冬暖か
は・な・み・ず・き
冬暖か窓へ椅子寄せ膝に猫
眠睡花
冬ぬくし老夫婦の手もぬくし
まるかじり
園児乗せバギー賑やか冬ぬくし
花彼岸
広縁のちちははが呼ぶ冬暖か
Kかれん
手水舎も冬暖かし稚児の手や
さぶろう
冬暖か老夫婦のよく笑い
太之方もり子
路地裏の猫のあくびや冬ぬくし
三天朱印
車椅子の母と堤や冬暖か
八一九
冬暖か睡魔が追ふ寺の経
久下 真一
寝坊助の冬暖かな寝癖かな
須磨ひろみ
冬暖か年中着たるエアリズム
たこぼうず
冬暖か四月にばあばとなる知らせ
三島千尋
冬暖かホームの母は笑顔みせ
田中ようちゃん
冬あたたか園児のさんぽ腕の中
町神
飛び跳ねる冬暖かな庭に居り
田中田田蟲
老犬の寝息聞いたか冬暖か
なつめモコ
冬ぬくし着物の母の手も温し
菅原ゆう
冬暖か湯けむり立つる宿の坂
影夢者亜
狛犬も冬暖かの欠伸かな
沙一
冬暖か白髪編むいま母少女
吉田竹織
冬暖か猫はへそ出し伸びてをり
石本新香
冬暖か車上にぷかり眠り猫
有骸蟲蜴
バスタオル冬暖かに陽の香る
中島穂華
冬ぬくし寄り道をする児らの声
中防美津子
冬温し独り撫でやる猫の腹
押川紫宗
冬暖か隣家の犬静かなり
華風ルナ
冬暖か飛行機雲はまっすぐ
ミント・スチュワート
リズム良き夫の寝息や冬ぬくし
若葉わかば
腕まくり歩く老躯や冬暖か
亀亀子
冬暖か廻り道してペダル踏む
大阪駿馬
狛犬が居眠りをする冬暖か
雅屋少将
晴れ姿冬暖かな二十歳の日
雅 寝子
編み棒が跳ねる妻の手冬温し
藤 無南
冬暖かもてなす客の心地よく
清水まちつぼ
冬暖か吾子のボールが日溜まりに
安曇野まりえ
孫を抱く妻の微笑(ほほえみ)冬ぬくし
中島尚之
誘われて冬暖かやランチどき
國本秀山
冬暖か2時間待ちの観覧車
深澤 健聖
冬んぬくし猫は縁側姿なし
余熱
冬ぬくし稚児抱くママの頰赤し
西野桃果
冬暖か墓地に漂う線香香
柴桜子
寅さんの矢切の渡し冬暖か
dragon
リハビリ日冬暖かや弾む足
井上美月
玻璃越しのソファふかふか冬ぬくし
滝美音
冬暖か心遊ぶヘヴンかな
平松瑞藍
受診日の伴侶の背に陽冬暖か
ティアラ文緒
犬抱いて駅でパパ待つ冬ぬくし
松永恕淳
まどぎわに冬暖かく座りけり
おのまい
息災の妻子孫あり冬暖か
達坊
靴音のヌクヌクと冬暖かし
高市青柘榴
バスを待つ列のふくらみ冬暖か
円路
懐に入れし猫ほどぬくき冬
霜川このみ
冬あたたか引率の児の赤帽子
中田邦光
次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!
投句はこちら
選者コメント
夏井いつき選
◆歳時記によっては、「冬暖か」と「暖冬」が別の季語とされていたり、「冬暖か」が「冬ぬくし」の傍題になっていたりと、編者の考え方に多少の揺れはあるようですが、本意は「冬の最中の暖かい日」のこと。冬は風が吹くと体感温度が下がりますので、風のない穏やかな日和でしょう。
◆「布団を重ねて冬あたたか」「鍋ものをして冬あたたか」的な、何かの行為の結果としてあたたかくなった、という使い方には問題があります。あくまでも時候の季語であることを踏まえて下さい。
◆「冬暖か」が六音の季語なので、使い方を迷った句もかなりありました。
上五に季語をおいて1音字余りとし、中七下五で調べを取り戻すのが、定石ではありますが、下五に置いても「ふゆあたたか」という響きが柔らかく、リズムがあるので、余り違和感がありません。
なかには、六・五・六で足して十七音という破調の句も散見しましたが、破調の場合は一句の内容がその調べ・リズムに見合っていないと失敗します。単純に十七音にすれば良い、と考えるのではなく、「内容と調べ」は連動していなくてはならないことを肝に銘じて下さい。
◆今回、選外になった句には、以下のようなものがありました。
①内容がよいのに調べがギクシャクしている。
②フレーズは面白いが、別の季語のほうが生きる。=季語が動く。
③気持ちは分かるが、述べ方が散文になっている。
選外の句の中には、推敲次第で生き返るものも沢山あります。まずは、それらをしばし寝かせて、少し時間をおいてから、推敲の作業にかかってみましょう。人それぞれ、客観的に自作を観ることのできる時間は違います。更に、自分自身の俳筋力の付き方によっても、変わってきます。来年の「冬暖か」な頃に、再考してみるのも一手かもしれません。
※今回の兼題「冬暖か」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4344句、投句人数1749人となりました。以下、類想句の一覧です。