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中級者以上結果発表 秀作
2024年10月20日週の兼題
冬暖か
【曜日ごとに結果を公開中】
月曜日
火曜日
水曜日
木曜日
金曜日
銀行出て冬あたたかな無一文
いかちゃん
選者コメント
夏井いつき
選
銀行のATMで確認すると、待望の入金(給料? ギャラ? 仕送り?)がなかったのでしょか。株か何かでスッテンテンになってしまったのかもしれません。「冬あたたかな」が「無一文」に掛かってくるこのノウテンキさが好きだなあ。
空豆のようなシューズや冬あたたか
中山月波
選者コメント
夏井いつき
選
「空豆」の句かと思いきや、「~ような」と比喩に展開し「シューズ」というモノを出現させ「~や」と詠嘆する。そのとたん、ソラマメ色の可愛いベビーシューズが見えてきました。「冬あたたか」な喜びの日のシューズですね。
二円足すうさぎの切手冬あたたか
藤里玲咲
選者コメント
夏井いつき
選
二円切手は、白いエゾウサギの絵柄。それがいかにも「冬あたたか」な日に似合っていると感じたのでしょう。「足す」という状況をあれこれ想像します。漢字と平仮名のバランスにもさりげない心遣いの効いている作品。
せみの死から始まる絵本冬あたたか
いさな歌鈴
選者コメント
夏井いつき
選
「谷川俊太郎さんの訃報に接して」とのコメントが付されていた一句です。詩「生きる」を題材にした絵本。「せみの死」と「冬あたたか」の取り合わせが、谷川さんの死生観を表しているようで、心の底にぽっと灯りがつくような心持ちになりました。
貝塚に及ぶ木の根や冬暖か
ぞんぬ
選者コメント
夏井いつき
選
「貝塚」に及ぶほど「木の根」が地を這って伸びているのです。作者は木の側にいて、作者の視点は「木の根」にあることが、語順と切れ字「や」によって読み取れます。季語「冬暖か」は、貝塚や大樹が過ごしてきた歳月を包み込んでそこにあります。
冬暖か鳩は愚鈍なほどしづか
天雅
選者コメント
夏井いつき
選
兼題「冬暖か」で、「猫」「犬」の次に多かったのが「鳩」との取り合わせでしたが、後半の「愚鈍なほどしづか」という描写にリアリティがあります。「冬暖か」な場所にじっと蹲る「鳩」のフォルムまでもが見えてきそうな一句です。
旧友のコブラツイスト冬あたたか
二十八
選者コメント
夏井いつき
選
何十年ぶりの再会なのでしょうか。子供の頃、学生の頃、ふざけ合った仲だったのでしょう。「旧友」と「冬あたたか」に挟まれた「コブラツイスト」の一語が、独自性と真実味を同時に確保。笑い合う声も聞こえてきそうです。
かもめ無き波の孤独や冬ぬくし
むさし野まさこ
選者コメント
夏井いつき
選
かもめがいないことを波は悲しんでいるという想念そのものが詩です。「孤独や」とまで言い募った点の評価は分かれるでしょうが、作者にとっては、そこに思いの中心があるのでしょう。季語「冬ぬくし」に柔らかな慰めがあります。
綿菓子の明るさまたは冬暖か
沖原イヲ
選者コメント
夏井いつき
選
「綿菓子」はひかりの糸がからむような「明るさ」で、くるくるくると生まれてきます。「または」は、どちらかを欲するの意でしょうか。もしかすると、その二つが別の何かに似ているよ、という楽しい謎々の一句かもしれません。
絵の具の手にレモン石鹸冬暖か
ふわり子
選者コメント
夏井いつき
選
「絵の具の手」としか書かれていませんが、色んな絵の具で楽しそうに汚れている手なのでしょう。その手にある「レモン石鹸」は、学校の手洗い場を思い出させます。「冬暖か」な光が蛇口の水をきらきらさせています。
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