類想一覧(選外)
軒先に連なる氷柱山の宿
希布
氷柱落ち欠片に日々の光かな
下條ちりり
子ら手折る氷柱まばゆきフェンシング
中津川 聖翠
食べようか氷柱やつらら昭和の子
平山千鶴
朝日影大氷柱の那智の滝
辻本四季鳥
氷柱手にジェダイの騎士を名乗りけり
小池博美
遠山の氷柱ごし見ゆ北の宿
鈴木古舟
立合う子朝日にかざす氷柱かな
朋部 琉
傘たたみ氷柱を小突く通学路
埼玉の巫女
軒先に喪失感や氷柱消ゆ
髙見艀舟
隣家との隙間を氷柱どどどがしゃん!
伊沢華純
シベリアの氷柱は象の牙の如
星醒
水滴の形につらつら氷柱かな
滝美音
朝には兄より伸びし氷柱の子
九条ぽん
しんしんと太郎の屋根に氷柱伸ぶ
堀雅一
登園を今朝も泣く吾子軒氷柱
井田みち
白鍵の如く連なる氷柱かな
sol
氷柱薙ぐ受験場へと赴かん
虎穴虎児
軒つらら鉄琴のごと打つ火箸
kikuti-aya
ベランダの手摺ぞのぶるつららあり
酔蚊眼
立山の朝日を宿す軒氷柱
案山子<いつき組広ブロ俳句部
黒部谷のつららは氷筍オンザロック
コーノ凡士
トンネルを抜けてパノラマ滝氷柱
杼 けいこ
軒氷柱せがんで父の肩車
津木百合
コツ、シャリン教頭落とす軒の氷柱
田村 宗貞
滝飛沫枝に纏わり氷柱生す
杉と松
禿頭氷柱の雫落ちにけり
於大純
昨日より今朝は太りし氷柱かな
中村 自在
氷柱手にトタン打ちたり通学路
江良 中
忍耐を超越の果て氷柱かな
ゆきなごむ
日の射して虹色走る氷柱かな
豊岡重翁
一本の氷柱噛み噛みガキ大将
茶
青空や滴る氷柱軒の端
森里綾里
氷柱や湯の花香る北の宿
淡湖千優
背に眠る吾子を左へ軒氷柱
あかん(愛柑)いつき組note俳句部
猫の目や氷柱雫を追いかける
橋野こくう
地面まで五センチ足りぬ氷柱かな
大西秋桜
氷柱ってもっと大きくなったよね
黙々笛
つららつらら子らやさざめき合うひかり
藤原素粒子
先端に玉ひとしづく氷柱美し
佐竹紫円
移住はつ氷柱割るや里軒
木原和子 ださんさん
今いずこ子供の頃の軒氷柱
平川一空
肩口に氷柱のしずく燦めきて
立野音思
氷柱折りて長さを競う通学路
ひと粒の種
色褪せしライトアップの滝氷柱
こうたろう
氷柱掲げ我は勇者と叫ぶ吾子
山本マユミ
軒下を氷柱に貸してもう三月
北五帆
円座して軒の氷柱のハイボール
酒井均
ちゃんばらに折れぬ氷柱の旭川
岡崎佐紅
大つらら大地に牙が刺さりをり
坂口いちお
陽の入射つららの反射にじの色
あさぬま雅王
すってんころり氷柱に見られ恥ずかしや
赤坂みずか
氷柱伸ぶやがては水になる脆さ
朱鷺9条湯八
足早に朝日と氷柱並ぶ路
ムシ・ミカミ
ぽーつとんと氷柱溶け合ひリズムよし
浩子赤城おろし
朝日浴びベシべしべしと氷柱折る
猪飼 篤彦
道の端に滴り落ち光る氷柱
村田益次郎
氷柱は角突き牛の角に似て
犬淵貉
酒蔵やグラスに氷柱挿して呑む
青木豊実
朝日さす庇に氷柱夢のごと
竹の子
手に氷柱登校中のフェンシング
深澤 健聖
登校の児の首縮む氷柱かな
高本蒼岑
陽にキラリ氷柱雫は三拍子
鱈 瑞々
瀬戸内育ち輝く氷柱を知らず
向日葵蜜柑
氷柱の逆さ支への大地かな
久里尋太
氷柱伸ぶつらつらつららつらららら
たこぼうず
軒氷柱子どもの鳴らす音楽会
藤本 仁士
七色の光ちらして氷柱かな
細木さちこ
走る子と同じ背丈の氷柱かな
富永武司
ばあちゃんちの氷柱とポーズ都会の子
宝塚御殿子
つらつらと氷柱家主はしかめ面
鷹星
朝まだき犬の散歩や軒つらら
三天朱印
いと長き長き氷柱よ明日もあれ
河島 八々十
昼下がり氷柱雫に口開けて
吉川花ほっぺ
パタピトポッツン手水鉢に落つ氷柱水
卑弥呼
陽に透かすつららの中に小宇宙
小春風 幸
幼子を寄り道誘ふ氷柱かな
蓮田初老
小便小僧のちんちんに氷柱かな
メディックス千里
空の青ツララキラキラ古希の旅
中島尚之
軒下を占めし氷柱や剣の如
増田楽子
軒の端の氷柱懐かし温暖化
香取扇公
ぺちゃくちゃと氷柱お喋り始まりぬ
吉田春代
ポキポキと氷柱折りゆく子供かな
原島ちび助
エイっヤーとつらら刀を追想し
しいなはづき
痩せてなほ痩せやうとする氷柱かな
槇原九月
朝の日に氷柱ずらりと軒笑ふ
おおにしまこと
軒先の氷柱びとびと雫せり
丸山晴耕
天からの槍が数本氷柱かな
大野美波
陽を浴びて光りて落つる氷柱かな
みなづき光緒
日の出て氷柱千本身を細む
宮川武久
明け空の青閉じ込むる氷柱かな
明後日めぐみ
山宿や氷柱を手折りオンザロック
せりよさ
かたぐるま吾子は氷柱にさわりけり
富良里旅人
見飽きてもなおそこにいる氷柱さん
小柳ジョージ
友達と舐めながら行く氷柱かな
山本葉舟
軒下の氷柱を落とし安全に
早坂 一周
山里の藁葺き屋根に軒氷柱
加藤光狗
よく来たな氷柱の後ろに父笑顔
ゆぃ
傘の先つらら落とすやつつららら
まぐのりあ(蚊帳のなか)
無人駅に規則正しき氷柱かな
ナタデココ
つっつつつ雫垂ららり氷柱なり
案浦エミリー
どれにしよ今宵氷柱のロックかな
おかえさき
軒先の氷柱の滴落ちにけり
ニッシャン
晴れた日は氷柱刀に遊ぶ子等
田中ようちゃん
老木の無数の氷柱光けり
望月ぽん
結球す氷柱雫やクリスタル
安曇 平
手に氷柱剣と掲げて王気取り
巳智みちる
通学路かざす氷柱や大まおう
岸壁の龍崎爺
吾子の指す「つららきらきらぽったぽた」
鈴木すゞ
朝日浴び音奏でけり軒氷柱
田中一升
目覚めれば氷柱の檻と紛う朝
東 湘輝
ことごとく氷柱折られし通学路
中防美津子
赤んぼの親指ほどの氷柱かな
渡部 あつし
歯自慢の齧ってみせたる軒氷柱
あたしは斜楽
氷柱より星屑きらら産まれおち
橘散里
田沢湖の露天風呂氷柱を齧り
哲山(山田 哲也)
手水舎の龍の垂涎めく氷柱
正岡田治
あつ冷た背筋伸ばせば氷柱に陽
やっちゃんち
氷柱折る意気軒昂の通学路
一 華楓
軒氷柱折りてちやんばら助太刀に
acorn
軒氷柱先から少しずつ落とし
神谷史記
氷柱にも友も家族もいる軒端
井上鈴野
山小屋のつらら子ら打つ三拍子
海月のあさ
秘湯の夜軒に氷柱酒を飲む
鈴木のチイ
笑み浮かべ寝る子は育つ軒つらら
鵬
凛として氷柱がまもる空き家かな
風谷エクレア
ドラゴンの牙めく氷柱家を呑む
一井蝸牛
深更や氷柱の伸ぶる音聞こゆ
真咲よしの
はじっこからぜんぶ氷柱おとす吾子
はるく
古家の氷柱大中小ドレミ
花南天anne
サスペンスの鈍器夜の大氷柱
山吹なお
里帰り今も変わらぬ氷柱かな
秋谷 忍
氷柱二個チャンバラ飽きてかじる吾子
鮃鰈
白き壁とぎれ酸ヶ湯の銀氷柱
篠雪
子等が来てやがて折らるる氷柱かな
辻󠄀勢
名探偵凶器解明大氷柱
春よ来い
吾子握る氷柱の剣や朝日浴び
有田みかん
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
兼題:氷柱
傍題:垂氷・立氷・銀竹・氷条・氷箸・氷笋・氷筋
◆思った以上に類想のパターンが、際立っていました。その理由の一つとして考えられるのは、季語「氷柱」の取り合わせは、案外難しいということです。季語以外のものとの距離感が掴みにくいのかもしれません。
だから、氷柱のある光景を俳句にした方がやりやすそうに感じて、一物仕立ての句が多くなったのではないかと。
一物仕立ては、「氷柱」を描写するしかありませんから、どうしても類想が多くなる。今回の類想パターンは、傾向がはっきり分かります。
【類想パターン】
■ 視覚
・ 綺麗 美しい
・ 透き通って向うの景色が見える 歪んでいる → 青空 太陽 山 緑など
・ 光を集める → プリズム 虹 七色
・ ~のようだという見立て → 剣や刃 獣の牙や歯 涎や涙 など
・ 太さや大きさにびっくり
・ 夜の間に伸びる 育つ 太る
・ 風の方向に曲がる
■ 氷柱が並んだ様子が
・ 檻 囲い
・ 城や宮殿
・ 鉄琴 木琴 鍵盤 ハーモニカ パイプオルガン
・ 楽器のよう → 鳴らす 鳴る 奏でる(トレモロ シンフォニー 交響曲など)
■ 場所
・ 家の軒 廃屋 廃校 空き家の軒
・ 蛇口 手水場の龍の口 車
・ 滝 崖
・ 温泉宿 山の宿
・ 露天風呂 → 氷柱を折って入れてみる
・ 三十槌の氷柱(名所 ライトアップされる) 酸ヶ湯温泉など
■ こんなことしてみる
・ 触る つつく 背中におんぶした子 肩車の子が掴みたがる
・ 長さを比べる 競う
・ 折る 薙ぎ払う → 箒 スコップ 傘 杖などで → 子供のちゃんばらごっこ フェンシング 勇者になった気分
・ 舐める 齧る 食う → 子供時代の記憶 (自分 兄弟 姉妹)
・ 洋酒に入れる オンザロック
・ (心理的に)心を刺す 貫く → 憎い相手を刺したい 我が心を刺す
■ 気温が上がると
・ 痩せる 溶ける 細る
・ (氷柱が溶けるように)心がとける わだかまりが消える
・ 温暖化で最近は氷柱を見ない
■ 落ちるとき
・ 氷柱の落ちる音が響く
・ (大きな軒氷柱の場合)用心しながら出入りする → 危険 こわごわ 怖い
■ 閉じ込める 孕む
・ 閉じ込めている 封じている → 太陽 星 光 虹 月など
・ (氷柱越しに見えるのを閉じ込めていると表現)花 緑 匂い 香など
・ 凝る → 月 太陽など 時間が凝固する
・ 孕む 宿す → 太陽 月 光など
■ オノマトペ
・ きらきら きらら
・ (雫が)ぽたぽた ぽたり
・ つらつらつらら
・ ラララ ららら♪
■ その他
・ 南国の人 都会の人 → 氷柱を見て喜ぶ はしゃぐ
・ 氷柱の香 → 錆の匂い 草の匂い 鉄の香 甘く感じる
・ 氷柱(あるいは雫) → 地核やマントルに向かって伸びる 落ちる
・ (極寒の地)氷柱が → 髪 髭 鼻に
◆毎回お伝えしていることではありますが、類想の土台に、一匙分のオリジナリティやリアリティを加えて、並選・佳作以上になっている句もあります。そこを自分なりに分析してみることが、自身の俳筋力トレーニングになります。
ちなみに、「氷柱→凶器→殺人→ミステリー」というパターンが、中級にも多かったのは、少々苦笑いいたしました。
※今回の兼題「氷柱」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4310句、投句人数1702人となりました。以下、類想句の一覧です。