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中級者以上結果発表

2024年11月20日週の兼題

氷柱

【曜日ごとに結果を公開中】

【類想】

選者コメント

夏井いつき

兼題:氷柱

傍題:垂氷・立氷・銀竹・氷条・氷箸・氷笋・氷筋


◆思った以上に類想のパターンが、際立っていました。その理由の一つとして考えられるのは、季語「氷柱」の取り合わせは、案外難しいということです。季語以外のものとの距離感が掴みにくいのかもしれません。

 だから、氷柱のある光景を俳句にした方がやりやすそうに感じて、一物仕立ての句が多くなったのではないかと。

 一物仕立ては、「氷柱」を描写するしかありませんから、どうしても類想が多くなる。今回の類想パターンは、傾向がはっきり分かります。


【類想パターン】

■ 視覚

 ・ 綺麗 美しい

 ・ 透き通って向うの景色が見える 歪んでいる → 青空 太陽 山 緑など

 ・ 光を集める → プリズム 虹 七色

 ・ ~のようだという見立て → 剣や刃 獣の牙や歯 涎や涙 など

 ・ 太さや大きさにびっくり

 ・ 夜の間に伸びる 育つ 太る

 ・ 風の方向に曲がる


■ 氷柱が並んだ様子が

 ・ 檻 囲い

 ・ 城や宮殿

 ・ 鉄琴 木琴 鍵盤 ハーモニカ パイプオルガン

 ・ 楽器のよう → 鳴らす 鳴る 奏でる(トレモロ シンフォニー 交響曲など)


■ 場所

 ・ 家の軒 廃屋 廃校 空き家の軒

 ・ 蛇口 手水場の龍の口 車

 ・ 滝 崖

 ・ 温泉宿 山の宿

 ・ 露天風呂 → 氷柱を折って入れてみる

 ・ 三十槌の氷柱(名所 ライトアップされる) 酸ヶ湯温泉など


■ こんなことしてみる

 ・ 触る つつく 背中におんぶした子 肩車の子が掴みたがる

 ・ 長さを比べる 競う

 ・ 折る 薙ぎ払う → 箒 スコップ 傘 杖などで → 子供のちゃんばらごっこ フェンシング 勇者になった気分

 ・ 舐める 齧る 食う → 子供時代の記憶 (自分 兄弟 姉妹)

 ・ 洋酒に入れる オンザロック

 ・ (心理的に)心を刺す 貫く → 憎い相手を刺したい 我が心を刺す

 

■ 気温が上がると

 ・ 痩せる 溶ける 細る

 ・ (氷柱が溶けるように)心がとける わだかまりが消える

 ・ 温暖化で最近は氷柱を見ない


■ 落ちるとき

 ・ 氷柱の落ちる音が響く

 ・ (大きな軒氷柱の場合)用心しながら出入りする → 危険 こわごわ 怖い


■ 閉じ込める 孕む

 ・ 閉じ込めている 封じている → 太陽 星 光 虹 月など

 ・ (氷柱越しに見えるのを閉じ込めていると表現)花 緑 匂い 香など

 ・ 凝る → 月 太陽など 時間が凝固する

 ・ 孕む 宿す → 太陽 月 光など


■ オノマトペ

 ・ きらきら きらら

 ・ (雫が)ぽたぽた ぽたり

 ・ つらつらつらら

 ・ ラララ ららら♪


■ その他

 ・ 南国の人 都会の人 → 氷柱を見て喜ぶ はしゃぐ

 ・ 氷柱の香 → 錆の匂い 草の匂い 鉄の香 甘く感じる

 ・ 氷柱(あるいは雫) → 地核やマントルに向かって伸びる 落ちる

 ・ (極寒の地)氷柱が → 髪 髭 鼻に


◆毎回お伝えしていることではありますが、類想の土台に、一匙分のオリジナリティやリアリティを加えて、並選・佳作以上になっている句もあります。そこを自分なりに分析してみることが、自身の俳筋力トレーニングになります。

 ちなみに、「氷柱→凶器→殺人→ミステリー」というパターンが、中級にも多かったのは、少々苦笑いいたしました。



※今回の兼題「氷柱」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4310句、投句人数1702人となりました。以下、類想句の一覧です。


類想一覧(選外)

  • 軒先に連なる氷柱山の宿

    希布

  • 氷柱落ち欠片に日々の光かな

    下條ちりり

  • 子ら手折る氷柱まばゆきフェンシング

    中津川 聖翠

  • 食べようか氷柱やつらら昭和の子

    平山千鶴

  • 朝日影大氷柱の那智の滝

    辻本四季鳥

  • 氷柱手にジェダイの騎士を名乗りけり

    小池博美

  • 遠山の氷柱ごし見ゆ北の宿

    鈴木古舟

  • 立合う子朝日にかざす氷柱かな

    朋部 琉

  • 傘たたみ氷柱を小突く通学路

    埼玉の巫女

  • 軒先に喪失感や氷柱消ゆ

    髙見艀舟

  • 隣家との隙間を氷柱どどどがしゃん!

    伊沢華純

  • シベリアの氷柱は象の牙の如

    星醒

  • 水滴の形につらつら氷柱かな

    滝美音

  • 朝には兄より伸びし氷柱の子

    九条ぽん

  • しんしんと太郎の屋根に氷柱伸ぶ

    堀雅一

  • 登園を今朝も泣く吾子軒氷柱

    井田みち

  • 白鍵の如く連なる氷柱かな

    sol

  • 氷柱薙ぐ受験場へと赴かん

    虎穴虎児

  • 軒つらら鉄琴のごと打つ火箸

    kikuti-aya

  • ベランダの手摺ぞのぶるつららあり

    酔蚊眼

  • 立山の朝日を宿す軒氷柱

    案山子<いつき組広ブロ俳句部

  • 黒部谷のつららは氷筍オンザロック

    コーノ凡士

  • トンネルを抜けてパノラマ滝氷柱

    杼 けいこ

  • 軒氷柱せがんで父の肩車

    津木百合

  • コツ、シャリン教頭落とす軒の氷柱

    田村 宗貞

  • 滝飛沫枝に纏わり氷柱生す

    杉と松

  • 禿頭氷柱の雫落ちにけり

    於大純

  • 昨日より今朝は太りし氷柱かな

    中村 自在

  • 氷柱手にトタン打ちたり通学路

    江良 中

  • 忍耐を超越の果て氷柱かな

    ゆきなごむ

  • 日の射して虹色走る氷柱かな

    豊岡重翁

  • 一本の氷柱噛み噛みガキ大将

  • 青空や滴る氷柱軒の端

    森里綾里

  • 氷柱や湯の花香る北の宿

    淡湖千優

  • 背に眠る吾子を左へ軒氷柱

    あかん(愛柑)いつき組note俳句部

  • 猫の目や氷柱雫を追いかける

    橋野こくう

  • 地面まで五センチ足りぬ氷柱かな

    大西秋桜

  • 氷柱ってもっと大きくなったよね

    黙々笛

  • つららつらら子らやさざめき合うひかり

    藤原素粒子

  • 先端に玉ひとしづく氷柱美し

    佐竹紫円

  • 移住はつ氷柱割るや里軒

    木原和子 ださんさん

  • 今いずこ子供の頃の軒氷柱

    平川一空

  • 肩口に氷柱のしずく燦めきて

    立野音思

  • 氷柱折りて長さを競う通学路

    ひと粒の種

  • 色褪せしライトアップの滝氷柱

    こうたろう

  • 氷柱掲げ我は勇者と叫ぶ吾子

    山本マユミ

  • 軒下を氷柱に貸してもう三月

    北五帆

  • 円座して軒の氷柱のハイボール

    酒井均

  • ちゃんばらに折れぬ氷柱の旭川

    岡崎佐紅

  • 大つらら大地に牙が刺さりをり

    坂口いちお

  • 陽の入射つららの反射にじの色

    あさぬま雅王

  • すってんころり氷柱に見られ恥ずかしや

    赤坂みずか

  • 氷柱伸ぶやがては水になる脆さ

    朱鷺9条湯八

  • 足早に朝日と氷柱並ぶ路

    ムシ・ミカミ

  • ぽーつとんと氷柱溶け合ひリズムよし

    浩子赤城おろし

  • 朝日浴びベシべしべしと氷柱折る

    猪飼 篤彦

  • 道の端に滴り落ち光る氷柱

    村田益次郎

  • 氷柱は角突き牛の角に似て

    犬淵貉

  • 酒蔵やグラスに氷柱挿して呑む

    青木豊実

  • 朝日さす庇に氷柱夢のごと

    竹の子

  • 手に氷柱登校中のフェンシング

    深澤 健聖

  • 登校の児の首縮む氷柱かな

    高本蒼岑

  • 陽にキラリ氷柱雫は三拍子

    鱈 瑞々

  • 瀬戸内育ち輝く氷柱を知らず

    向日葵蜜柑

  • 氷柱の逆さ支への大地かな

    久里尋太

  • 氷柱伸ぶつらつらつららつらららら

    たこぼうず

  • 軒氷柱子どもの鳴らす音楽会

    藤本 仁士

  • 七色の光ちらして氷柱かな

    細木さちこ

  • 走る子と同じ背丈の氷柱かな

    富永武司

  • ばあちゃんちの氷柱とポーズ都会の子

    宝塚御殿子

  • つらつらと氷柱家主はしかめ面

    鷹星

  • 朝まだき犬の散歩や軒つらら

    三天朱印

  • いと長き長き氷柱よ明日もあれ

    河島 八々十

  • 昼下がり氷柱雫に口開けて

    吉川花ほっぺ

  • パタピトポッツン手水鉢に落つ氷柱水

    卑弥呼

  • 陽に透かすつららの中に小宇宙

    小春風 幸

  • 幼子を寄り道誘ふ氷柱かな

    蓮田初老

  • 小便小僧のちんちんに氷柱かな

    メディックス千里

  • 空の青ツララキラキラ古希の旅

    中島尚之

  • 軒下を占めし氷柱や剣の如

    増田楽子

  • 軒の端の氷柱懐かし温暖化

    香取扇公

  • ぺちゃくちゃと氷柱お喋り始まりぬ

    吉田春代

  • ポキポキと氷柱折りゆく子供かな

    原島ちび助

  • エイっヤーとつらら刀を追想し

    しいなはづき

  • 痩せてなほ痩せやうとする氷柱かな

    槇原九月

  • 朝の日に氷柱ずらりと軒笑ふ

    おおにしまこと

  • 軒先の氷柱びとびと雫せり

    丸山晴耕

  • 天からの槍が数本氷柱かな

    大野美波

  • 陽を浴びて光りて落つる氷柱かな

    みなづき光緒

  • 日の出て氷柱千本身を細む

    宮川武久

  • 明け空の青閉じ込むる氷柱かな

    明後日めぐみ

  • 山宿や氷柱を手折りオンザロック

    せりよさ

  • かたぐるま吾子は氷柱にさわりけり

    富良里旅人

  • 見飽きてもなおそこにいる氷柱さん

    小柳ジョージ

  • 友達と舐めながら行く氷柱かな

    山本葉舟

  • 軒下の氷柱を落とし安全に

    早坂 一周

  • 山里の藁葺き屋根に軒氷柱

    加藤光狗

  • よく来たな氷柱の後ろに父笑顔

    ゆぃ

  • 傘の先つらら落とすやつつららら

    まぐのりあ(蚊帳のなか)

  • 無人駅に規則正しき氷柱かな

    ナタデココ

  • つっつつつ雫垂ららり氷柱なり

    案浦エミリー

  • どれにしよ今宵氷柱のロックかな

    おかえさき

  • 軒先の氷柱の滴落ちにけり

    ニッシャン

  • 晴れた日は氷柱刀に遊ぶ子等

    田中ようちゃん

  • 老木の無数の氷柱光けり

    望月ぽん

  • 結球す氷柱雫やクリスタル

    安曇 平

  • 手に氷柱剣と掲げて王気取り

    巳智みちる

  • 通学路かざす氷柱や大まおう

    岸壁の龍崎爺

  • 吾子の指す「つららきらきらぽったぽた」

    鈴木すゞ

  • 朝日浴び音奏でけり軒氷柱

    田中一升

  • 目覚めれば氷柱の檻と紛う朝

    東 湘輝

  • ことごとく氷柱折られし通学路

    中防美津子

  • 赤んぼの親指ほどの氷柱かな

    渡部 あつし

  • 歯自慢の齧ってみせたる軒氷柱

    あたしは斜楽

  • 氷柱より星屑きらら産まれおち

    橘散里

  • 田沢湖の露天風呂氷柱を齧り

    哲山(山田 哲也)

  • 手水舎の龍の垂涎めく氷柱

    正岡田治

  • あつ冷た背筋伸ばせば氷柱に陽

    やっちゃんち

  • 氷柱折る意気軒昂の通学路

    一 華楓

  • 軒氷柱折りてちやんばら助太刀に

    acorn

  • 軒氷柱先から少しずつ落とし

    神谷史記

  • 氷柱にも友も家族もいる軒端

    井上鈴野

  • 山小屋のつらら子ら打つ三拍子

    海月のあさ

  • 秘湯の夜軒に氷柱酒を飲む

    鈴木のチイ

  • 笑み浮かべ寝る子は育つ軒つらら

  • 凛として氷柱がまもる空き家かな

    風谷エクレア

  • ドラゴンの牙めく氷柱家を呑む

    一井蝸牛

  • 深更や氷柱の伸ぶる音聞こゆ

    真咲よしの

  • はじっこからぜんぶ氷柱おとす吾子

    はるく

  • 古家の氷柱大中小ドレミ

    花南天anne

  • サスペンスの鈍器夜の大氷柱

    山吹なお

  • 里帰り今も変わらぬ氷柱かな

    秋谷 忍

  • 氷柱二個チャンバラ飽きてかじる吾子

    鮃鰈

  • 白き壁とぎれ酸ヶ湯の銀氷柱

    篠雪

  • 子等が来てやがて折らるる氷柱かな

    辻󠄀勢

  • 名探偵凶器解明大氷柱

    春よ来い

  • 吾子握る氷柱の剣や朝日浴び

    有田みかん

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

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