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中級者以上結果発表

2024年11月20日週の兼題

氷柱

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 手で払う氷柱踏みつけ機関長

    神谷たくみ

    選者コメント

    夏井いつき

     後半に独自性があります。落ちた氷柱を「踏みつけ」という足元の映像。それが「機関長」であると分かった瞬間に、船のエンジン音、甲板の潮の匂いや油臭までもが伝わってきます。言外の情報が、「氷柱」の現場をより感じさせます。
  • 呼び鈴も押さず見上げる氷柱かな

    彩桜里

    選者コメント

    夏井いつき

     太くて長い氷柱に驚いているのでしょうか。氷柱がびっしりと塞ぐように伸びている玄関かもしれません。呼び鈴を押しもせず、只々見上げている。そんな動作を書いているだけなのに、氷柱の様子や作者の心情がありありと伝わります。
  • 相続の家・庭・栗の木と氷柱

    イサク

    選者コメント

    夏井いつき

     実家と「氷柱」の取り合わせも多数ありましたが、相続したものを「家・庭・栗の木と氷柱」と並べることで、軒氷柱垂れた古い家屋・庭・栗畑までをも映像として再現しました。下五「氷柱」の体言止めも、作者の意図通りの効果です。
  • 搾乳へ明けの氷柱をなぎはらひ

    にゃん

    選者コメント

    夏井いつき

     牛舎、豚舎、鶏舎等の氷柱を落とす光景を描いた句も多数ありました。それらと比較した時、「搾乳へ」という上五が巧いですね。人物と場所と目的が一気に伝わってきます。「明け」という時間、「なぎはらひ」という動作の勢い、見事な表現です。
  • バンパーの氷柱岳麓車中泊

    樫の木

    選者コメント

    夏井いつき

     「岳麓」は「がくろく」と読んで、文字通り「山のふもと」の意。「バンパー」に垂れ下がっている「氷柱」に焦点を当て、そこから「岳麓車中泊」と状況を描きます。計画的なものか、はたまたアクシデントに見舞われたか。想像が膨らみます。
  • 草氷柱越しに見てゐる草のいろ

    そら

    選者コメント

    夏井いつき

     「草氷柱」とは、水滴が草の葉の先に凍ったもの。屈んで、その小さなひかりに目を凝らしてみると、氷柱越しに見えている「草のいろ」がハッとするほど美しいことに気付いたのです。その瞬間の感動が見事にパッキングされた一句。
  • 電線に氷柱の生える勤務地よ

    ぜのふるうと

    選者コメント

    夏井いつき

     雪の降らない土地から転勤してくると、「電線に氷柱の生える」という何気ない現実に戦いたりもするのです。今日から始まるこの地での生活。下五「勤務地よ」という詠嘆に、転勤族の溜息がどっしりと吐き出されます。
  • 氷柱太る網走監獄教誨堂

    ジン・ケンジ

    選者コメント

    夏井いつき

     「氷柱」と「網走」の取り合わせの句もありましたが、「網走監獄」から「教誨堂」と絞ることで、その窓や庇の氷柱が見えてきます。人の道を説き更生に導くための教誨堂。動詞「太る」によって時間の厚みも想像されます。
  • 心経や氷柱ごと供花焚べる夜を

    常幸龍BCAD

    選者コメント

    夏井いつき

     「心経や」という大胆な上五もさることながら、そこからの展開が巧いですね。小さな氷柱がついた供花を火に放り込むという氷と火の対比表現。「焚べる夜を」という余韻の向こうに、心経の低い響きが聞こえてくるようで。
  • ハンマーが氷柱ぶち折る捕鯨船

    理酔蓮

    選者コメント

    夏井いつき

     「捕鯨船」も季語ですが、「氷柱」を主たる季語として読んだ方が迫力があります。捕鯨砲や鯨を引き揚げるウィンチなどが凍り付き、太い氷柱が垂れているのでしょう。中七「ぶち折る」という描写に強いリアリティがあります。

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