類想一覧(選外)
春着着て桃割れの子のはにかみし
kikuti-aya
春着の娘誓いを込めて弓を引き
ぽんたちん
駅降りる春着の孫やはにかみて
内田高雲
可愛くて攫われないか春着の子
小山 晃
外泊の許可出た母に春着着せ
とりゆふ
古稀も過ぎ齢重ねし春着かな
中島 裕貴
またもやも鏡の前に春着の子
一雁低空
叔母着従姉妹着姉着めぐって春着
吽田のう
春着着て早く脱ぎたしまた着たし
虎穴虎児
お揃いの春着の姉妹駆け出しぬ
滝美音
母の手に小さき春着懐かしむ
イガチョフ良一
参道の運動靴の春着の子
リカ
朝まだき春着装う社かな
蓮田初老
かしこまり氏神様へゆく春着
あまま
転けぬよう気を張り詰めて春着かな
正雪
春着の子春着の子抱く母となり
市橋正俊
母縫いし春着着せてくれるも母
越前俊水
母縫いし春着はそっと枕元
俵信
春着着て立ち振る舞いの変化かな
まりい木ノ芽
新しき下着真白き春着なり
鈴木すゞ
犬と子の春着華やぐ宮詣り
dragon
神鶏に追はれ泣き出す春着の子
松元転石
ピカチュウを抱いて春着の子の闊歩
二十八
三世代着継ぐ春着はたおやかに
雅 寝子
食べ歩きこれ見よがしの春着の娘
たていし 隆松
春着きたふたりくぐるや大鳥居
おんあいす
品作る春着の亜子の指先よ
菅原ゆう
春着きて家族へ動画メッセージ
かんこ鳥
声高しおのづと目立つ春着の子
タケザワサトシ
春着の子汁粉零ぼすもすまし顔
岡塚敬芳
仮設には春着の子らのキャッキャキャッキャ
コーヒー博士
日本町歩く春着の子はズック
駄々
おさがりの藍の帯締め春小袖
理真
セピア色祖父に抱かれし春着の吾
濱本典々
君を待つ春着の襟を整えて
七日
嫁ぎ来て箪笥に眠る春着かな
丸山佳子
春着の娘後ろ姿を姿見に
横山山水
春着着てルルンタくるり廻る子や
あねもねワンヲ
章脳の香る春着の形見かな
宇田女deノエル
春着きて別人のよう淑やかに
ニッシャン
春着着る姪っ子久し二度見する
黒島海斗
次々と春着きす母古着きて
嶌田飛鳥
はにかみて親のうしろの春着の子
伊藤 蒼邨
子の寝息春着あたため朝を嗅ぐ
青みどり
踏ん張りて満員電車春着かな
斧 的部
初めての化粧むずかる春着かな
宝塚御殿子
とつておきの春着に合はす髪飾り
もふ美
ぶかぶかの草履はたはた春着の子
Dr.でぶ
今も昔も皆春着のひとときを
そわかそわか
めでたさのなき病床の春着かな
津木百合
普段はジーンズ内股の春着の娘
円美々
遺影おき着せた春着に花咲きぬ
北五帆
しつけ糸残りし母の春着かな
山もと 日月坊
肩上げを下ろし今年の春着かな
細木さちこ
春着きせおっとっとっとそれだっこ
小島正見
春着の娘後ろ姿を気にしつつ
那須のお漬物
晩節も春着仕立てし友いづこ
鱈 瑞々
濃いルージュちょっと背伸びな春着かな
飾る
初孫が春着に燥ぐ初着物
あさぬま雅王
肩上げを少し狭めて春着かな
acari
祖母の着た着物直してシン春着
雅屋少将
木漏れ日に春着煌めく石畳
枡矢書右衛門
この春着かつて母着し花模様
井口あき子
草履脱ぎ跳ねてはしゃぐは春着の子
卑弥呼
春著買ふ少し大きめ母の愛
黄黄玉
八十路とて鏡いくたび春着かな
たむらせつこ
石畳み走る春着はスニーカー
わたり 和
姪の着る春着を着しは親と叔母
中村笙平
貧しくもたもと襷の春着かな
丸山晴耕
氏神へ小さき手合わせ春着の子
小野陽笑
春着の子等の放る賽銭の音
西瓜頭
新調の紅き春着に紅き頬
杜野 ほたる
枕元赤青二枚春着かな
千葉睦女
肩上げを解いてはにかむ春着の子
竹村マイ(蚊帳のなか)
不意に手を握り謝る春着の子
坂本 羊雲
思ひ出は春着の君と二人乗り
みなみはな
春着なりカメラを睨む吾五歳
つーじい
折角の春着姿を見せたくて
小和布
古希すぎて少し派手めの春着なり
ゆぃ
還暦やピンクの春着地味かしら
檜鼻ことは
姉弟子の春着や袖にしつけ糸
春蘭素心
春着脱ぎ胡坐をかくや三姉妹
谷 道悦
春着きて三度見直す同級生
豚々舎 休庵
春着とはいつも名ばかり震災後
我孫子もふもふ
りんごあめ舐めて春着の子の笑顔
おだかずこ
大人びた春着の友に目を反らす
羊飼いのメリー
陽光の春着に稚児のよだれかな
毛利尚人
町おこしレトロな春着きて歩く
ハルノ花柊
春着着しネールアートも賑やかし
竜眼ジジ
初々し春着の袖に醤油染み
土佐俳句人
筝曲の発表会の春着かな
浅井カバ先生
澄まし顔崩して笑ふ春着の子
紗羅ささら
春着の子トイレの仕方おぼつかぬ
信濃のあっくん
春着縫ふ母の背中の侘しさよ
琵琶湖のおばさん
窮屈さ二の次にして春着の娘
田畑せーたん
退院を迎ふ朝の春着かな
黒猫かずこ
春着きて母の背丈を追ひ抜きぬ
菅井香永
喜寿になり春着揃えてはつらつと
風花
春着紅くって木立では蕾かな
要睡止
綿菓子のピンクをねだり春着の子
宇のななみ
春着着て家族総出の日和かな
卓司
お転婆の春着に隠す袖の丈
バンブー
春着袖押さえ振る旗長和殿
高辺知子
リハビリを終へ春着での立ち写真
いちすぺ
溜席春着の女の大拍手
羅美兎
ひとりでもかわらぬ春着の鮮やか
たこ山焼之輔
春着の子足はいつものコンバース
中 兎波
兄追うて裾に転ぶや春着の子
谷山みつこ
にほひ残る祖母の春着や孫に合ふ
一歩亭六案
戦禍満つ地球裏側春着満ち
松本 探句トップ
セピアのネガ春着の母幼き日
向日葵蜜柑
肩上げをおろす頃かな春着の子
恋瀬川三緒
娘の見立て少し派手目の春着かな
中井無心
鳥居前小走りで来る春着の娘
かとしん
長き袖もて余しをり春着の子
伊藤てまり
髪結いて人それぞれの春着着る
宮沢 韋駄天
初句会紅一点の春着かな
福島 昇天
春着跳ねるや吾子の手に御籤
可部ショージ
正座してスマホ十五の春着かな
古乃池糸歩
春着の子ぜんまい式の玩具めく
福原あさひ
芳しき春着映えたる奥座敷
北山 烏兔
兄ちゃんの春着がいいと膨れ面
呼幸
簪を揺らし歩くや春着の娘
松永恕淳
串カツに並ぶ猫背の春着の子
永田千春
枕辺の春着いくども確かむ子
おかえさき
春着の子おもちゃ売り場に色を差す
島陽広
春着着て頬紅潮し砂かぶり
日向浜
青空の午後を春着の外国人
小室雅俊
その子はたち春着の記念写真かな
樋口滑瓢
何度でも鏡をのぞく春着の娘
さいたま水夢
春着着てかしまし三人Vサイン
夜ノ森ムーミン
寿ぎの声弾みたる春着かな
前田いろは
取り巻きの春着に迷ふ着付け方
誠馬ノマド
おさがりのまたおさがりの春着かな
中島走吟
背伸びして咲く花ごとき春着の子
香取扇公
初春着二十歳の自覚写メ残す
秋谷 忍
しづしづと揺れし袂や春小袖
今林快波
御端折りのさるる春着やふくれ面
山口絢子
男衆の春着すがたに二度見惚れ
風間 燈華
歌舞伎座へ春着の婆らさんざめく
真咲よしの
スマホには皺の消えたる春着の吾
美年
春着きてお内裏様のごと姉弟
海猫
ひととせを待ちたる春着能登のまち
一井蝸牛
おはしよりで走り出したる春着かな
うはのそら
春着着てお宮参りと頼み事
加藤光狗
整えられた春着夜明けの美容室
三無季生
春着縫ふ留学生に拝まれて
蘭丸結動
春着きて記念撮影背筋伸ぶ
荒木響
お転婆の春着闊歩す浅草寺
篠雪
少し派手かしらと春着選ぶ母
石塚彩楓
春着からげ春着の子を追いかけて
眠 睡花
春着の裾はずませて行くマチネかな
ざうこ
昭和の画大発会に春着の花
みしまちづる
境内に春着の二人はにかんで
れんげ畑
姉と春着カメラ構える祖父の声
加納仁桜
どうせならお寿司がいいと春着の娘
花亭五味
爺ちゃん家春着の孫がはしゃぎおる
スズランチイコ
春着つけタイムトラベル古都の路
しいなはづき
春着の子並ばせ笑顔母在りき
PONホンダ
ガラポンの列に春着の親と子と
せいち
我が春着父の形見の大島ぞ
鈴木古舟
姿見の前を何度も春着かな
相沢薫
仏前の春着の姉妹かしこまり
松本厚史
矢を射る春着三十三間堂
織部なつめ
艶やかな春着浮き立つ芝居小屋
立野音思
今年も同じ春着生きれた証
ぐりぐら京子
次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!
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選者コメント
夏井いつき選
◆まずは、この季語の本意を整理しておきましょう。
「春着(はるぎ)」は新年の季語。正月のために新調した晴着、または正月用の衣服を意味します。
私が子供の頃は、家族みなが新しい下着を着て、お正月を迎えておりました。そんな風習は、すっかり廃れてきたように思います。(少なくとも我が子育ての時代に、正月の枕元に子供たちの新しい下着を用意してやる、なんてことはほとんどありませんでした。皆さんのご家庭では、いかがでしょうか?)
◆ほとんどの歳時記によると、季語「春着」は「多くは子女のそれを指す」とされてきましたが、多様性が語られる現代ともなれば、季語の本意も今後少しずつ変化していくのかもしれません。
◆ついでにいうと、今回、「春着の娘」という句が相当数ありました。「娘」と書いて「こ」と読ませているのですが、この読みは強引です。(「女」と書いて「ひと」と読ませるのも、推奨致しかねます。)
どうしても「娘」という字を使いたいのならば、「むすめ」と三音で読むべきです。音数の都合で「こ」と読ませたいお気持は分かりますが、「春着の子(こ)」で、十分意味は伝わります。
◆今回の兼題「春着」が新年の季語であることだけは、しっかりと押さえて頂く必要があります。天・地に推した句は、それぞれ正月らしさの表現されていますので、是非参考にして下さい。
◆傍題にある「春衣」は、「はるぎ」と読めば新年の季語ですが、「はるごろも」と読むと、春の季語になっているようです。音数合わせで、「はるごろも」と読ませるのだろうと思われる投句もありました。歳時記を確認せず、イメージで季語を使っているケースが非常に目だった今回の兼題でした。
◆「春着縫う」という季語を使った句も幾つかありました。正月に着る春着を縫うとなれば、それは年内の行為ですから、冬の季語であることは覚えておきましょう。
それに伴っていえば、「春着買う」等も、年内の行為ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
※今回の兼題「春着」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4793句、投句人数1704人となりました。以下、類想句の一覧です。