俳句ポスト365 ロゴ

中級者以上結果発表

2024年12月20日週の兼題

春着

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • さあさあと春着のひとを前列へ

    主藤充子

    選者コメント

    夏井いつき

     記念写真でしょうか、大発会の場面かもしれません。「さあさあ」という呼びかけから、「前列へ」という措辞によって「春着のひと」を誘導する人の動き、「春着」の人たちの表情や動作も見えてきます。助詞「へ」の効果が十二分に発揮された一句です。
  • 振り向くや母は春着の軸として

    常幸龍BCAD

    選者コメント

    夏井いつき

     「振り向くや」という上五からの映像が大胆です。誰が振り向いたのか、と思ったとたんの「母」という人物。そのさまを、「春着の軸」と表現したことで、上五の動作が補填されます。助詞「は」も狙い通りの効果です。
  • 春著着て祖母の悲恋と母の恋

    可笑式

    選者コメント

    夏井いつき

     実らなかった「祖母の悲恋」の結果として、「母」は生まれ、その「母の恋」の末に生まれたのが私なのです。一枚の「春著」にまつわる「祖母」と「母」の人生を、たった十七音で書きとめてしまうのですから大したものです。
  • 役満で上がる正月小袖かな

    板柿せっか

    選者コメント

    夏井いつき

     「春着」の傍題「正月小袖」は、七音もあるのでなかなか使いずらいのですが、「かな」という詠嘆を伴っての後半の調べにうまく溶け込ませました。「役満」の一語の経済効率も見事。新年の家族麻雀の気分がよく表現されています。
  • 袖笑ふ春着や鶴見中継所

    ナノコタス

    選者コメント

    夏井いつき

     「袖笑ふ」の擬人化の理由が、後半「鶴見中継所」で分かってきます。箱根駅伝の往路は一区から二句、復路は九区から十区への襷リレーが行われるというお馴染みの中継所。「春着」の袖を振りに振って応援する様子がありありと立ち上がってきます。
  • ポン菓子のポンを浴びたる春着かな

    げばげば

    選者コメント

    夏井いつき

     初詣に訪れた参道の露店でしょうか。「ポン菓子」の音と香ばしい匂いに誘われて集まってくる人々。中七下五「ポンを浴びたる」という表現から、春着の子を想像しました。軽やかで明るい「かな」の詠嘆も佳いですね。
  • 祝儀袋をキヨスクに買ふ春小袖

    石上あまね

    選者コメント

    夏井いつき

     買い忘れていた祝儀袋か。期せずして出会った人に、心ばかりのお祝いを渡したいのか。「祝儀袋」というモノ、「キヨスク」という場所、「買ふ」という動作。各々の言葉をバランスよく選びつつ、「春小袖」という季語の現場をさり気なく描いています。
  • 春着着て鳩を蹴散らす母が好き

    樹海ソース

    選者コメント

    夏井いつき

     「春着」を着ての初詣でしょうか。境内で餌を欲しがる鳩に囲まれたのか、はたまた鳩の群が一斉に飛ぶ様子が好きなだけか。「春着」×「鳩を蹴散らす母」いうミスマッチを、更に裏切る「母が好き」という措辞の率直さが魅力です。
  • 餌やりの研究室へ寄る春着

    横山雑煮

    選者コメント

    夏井いつき

     「餌やり」から始まる語順が面白い一句。「研究室」で飼っている実験用動物なのでしょう。新年の「春着」を着たまま、ちょいと餌をやりに寄る研究室。季語「春着」のミスマッチが、逆にリアルな光景となって立ち上がります。
  • 厄年や春着の花を飼ひ慣らす

    ぞんぬ

    選者コメント

    夏井いつき

     「春着」とあり「花」とありますから、お正月の女性の晴着を想像しました。女性の「厄年」ですから、十九歳? かもしれませんが、「飼ひ慣らす」の複合動詞は少々曲者です。三十三歳の厄年と読むほうが妥当かもしれません。

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

投句はこちら