類想一覧(選外)
一歩ずつ急がず憩う落雲雀
桐山榮路村(キリヤマエジソン)
ああ愉快ドローンの粋よ揚雲雀
家古谷 硯翠
美空にも魏空の中も揚雲雀
リーガル海苔助
農作業止めて指さし雲雀だよ
金子あゆか
弾丸のごとき雲雀や虫ぱくり
だいごろう
懐かしい里山の帰途揚雲雀
小和布
畦道の風やわらかや初雲雀
竹内ユキ
コバルトのみ空へ雲雀溶けにけり
かぬまっこ木ノ芽
止まずとも落ちついてゆく雲雀の音
たこ山焼之輔
老楽の止まぬお喋り雲雀居り
無何有
雲雀鳴き手のひら空へ笑む子らよ
ゆぃ
我が行為空から見張る雲雀かな
露崎一己句
見上げる子あそこあそこと初雲雀
木村となえーる
いつせいに発ちし雲雀のその跡に
碧萃生
雲雀たち飛行機のよう雲を斬る
アケマシテオメデトウゴザイマス
汽笛にも似た雲雀らと発車かな
天鳥そら
万物や皆恋せよと揚雲雀
通事世露詩句
鳴き声に目を凝らしをり揚雲雀
中野風鈴
山を見ず空見ずされど雲雀飛ぶ
宇宙星人やばば
木造の大屋根リング雲雀鳴く
たこぼうず
俺様のシマを自在に揚雲雀
今野佑紀
雲雀鳴く蕾ふくらむ里山よ
岩本道人
揚雲雀音程高く歌ふなり
白井百合子
塹壕へ金烏の使者として雲雀
感受星 護
点となりし雲雀捉えて500ミリ
うみのひつじ
雲雀かな声はすれども姿無し
小島神泉
肥沃野に落ち声渡る雲雀かな
松元転石
揚雲雀追うて腰延ぶ背ナの延ぶ
若葉わかば
ドローンをじっとみる雲雀かな
月見太郎
無防備の雲雀巣覗く野球子よ
清水千種
燦燦と降り注ぐこゑ揚雲雀
余田酒梨
雲雀鳴く乳を欲しがる赤子泣く
山口康煌
どこまでも燃えずに舞ふや揚雲雀
喜寿の嵐
大の字で目に焼き付けん揚雲雀
高市青柘榴
ベランダの鉢から空へ雲雀かな
鳳凰美蓮
千年の静寂を破り揚雲雀
村上 継鳥
スタッカートのごと話すなり初雲雀
源早苗
追い風の朝のジョギング雲雀鳴く
林としまる
天辺を突き抜けてなほ揚雲雀
おおにしまこと
一生懸命下手くそ愛でる雲雀かな
山海動静
静寂を破る兆しに舞う雲雀
中にきゅお
雲雀一羽天に止まってをり見えず
倉持くらもん
鳴き継げる彼方此方の雲雀かな
谷村幸甚
覗き込む雲雀の横顔母みたい
戸田なお
日によばれ名乗りいでたる雲雀かな
渡嘉敷五福
揚げ雲雀吾の夢抱きふわり発ち
藤村 一寿
ここにいるここにいるよと雲雀かな
おかえさき
イカロスの轍は踏まぬと揚雲雀
黒澤墨青
雲雀飛ぶ肩の高さで声残る
WEDA ASH
ハムスターの本復の朝雲雀鳴く
奈良岡歩
尾羽を振りいざ飛び立つや揚げ雲雀
卓司
落ちてきし雲雀は巣までとつとつと
しおやま句吟子
雲雀どこ?久方ぶりの空青し
松永恕淳
舞い上がり縄張り示す雲雀かな
上津 力
雲雀の生美空ひばりの永遠歌
月谷 日耀
雲雀舞う空ヴィヴァルディの旋律
働太蔵
揚雲雀ドンファンに似て饒舌や
羅美兎
落雲雀声を吸い取る青天井
川島欣也
ジョギングの土手や雲雀の声聞いて
希布
ひばりの子親はどこまで揚がるやら
猪飼 篤
愛燦燦と歌う草原の雲雀かな
くろねこ
大空へ飛べ声響け揚げ雲雀
服部鉛筆
呼びかける雲雀の声は雲の中
恵翠善
ピチュピチュとひばり烈しや子のあらむ
スマイリーk
揚雲雀見失いたる暈の内
雑魚寝
土手散歩雲雀奏でるビバルディ
内田高雲
雲雀野や土煙舞う野球大会
鱈 瑞々
草むらの冠羽逆立つ雲雀かな
大谷 走郎
ヒーツヒーツせつかち鳥の雲雀かな
よかわもりお
蒼穹を占拠したりと揚雲雀
やっせん坊 池上
鳴き声を空に残して雲雀落つ
塩野谷慎吾
顔上げよ空を見上げよ雲雀啼く
富山の露玉
青空へてっぺん探す雲雀かな
瓢箪鮎
揚ひばり飛行機雲を真っ二つ
田辺ふみ
天網のほつれて雲雀一直線
勇緋ゆめゆめ
揚雲雀風を引きつれ見る見るに
Early Bird
スマホにて雲雀の声を聞きつつ投句
笑酔
揚雲雀ただひたむきに上へ上
ゆかりん
お告げのやうたしかに耳に揚げ雲雀
あらいすみこ
雲雀よイカロスの胸中いかに
三無季生
木屋根のリングあかるき揚雲雀
坪山紘士
だうだうと立てる冠羽や雲雀の子
いちすぺ
雲雀舞ふ小さき冠の気品かな
服部勝枝
ひとしきり鳴きて雲雀の堕ちにけり
岩田遊泉
雲雀なる鳥があちこちいたらしい
平山仄海
叫天子地に点を視る帰巣かな
嶺乃森夜亜舎
初雲雀あてなき恋のホバリング
風間 燈華
手庇しや米粒大の雲雀追ふ
荒木響
陽動す地の雲雀こそ健気なれ
森2五歩
振り向けば驚き隠せぬひばりかな
中田ことみ
声聞けど未だ見ぬ君雲雀かな
沢瀉
子を守る気概や雲雀高く鳴き
大関 邦友
揚雲雀「吾ここぞ」と本気のアリア
新井ハニワ
雲雀めが天の番所に付け届け
喜田紫陽
点となりこゑ天頂へ初ひばり
ひろ志
雲雀かな吸い込みそうな青い空
井口あき子
天翔ける雲雀雄々しく謳いおり
北山 烏兔
初雲雀納屋から農具出す合図
伊藤てまり
雲雀の鳴き声を聞いてる暇なんてありゃしない
羅蒐
わかれうたそんなん嫌や啼く雲雀
雅蔵
休耕の田にも畑にも雲雀かな
みやうちあけみ
アデと指す青空の先に鳴く雲雀
武藤睦礼
青空へ雲雀鳴けども我ひとり
みつき 夏
朝煙抜けて天向く雲雀かな
島陽広
太陽や利子くれ利取る雲雀
よぶこどり
ふるさとの畑や昼餉の揚雲雀
富良里旅人
旅さなか雲雀行き交う草原へ
はっしー
鳴く声に偲ぶ故里揚雲雀
髙見艀舟
出不精に早く動けと啼く雲雀
橋野こくう
天空に小さき点とす揚雲雀
円美々
幾本も雲雀の竿の立ちにけり
一二 三四郎
ヴィヴァルディ口ずさむ野辺揚雲雀
みしまちづる
揚雲雀そこから海が見えるかい
星野 威
そんなにも喜べるのか揚雲雀
αベット
甲高き雲雀の声や青き空
山田翔子
敷舞台三度高鳴く揚雲雀
くろけん
嗄れる声それも性とて雲雀鳴く
はぐれ雲
子や畑を授かり澄ます揚雲雀
桐山榮路村
ランドセル行く畦道の雲雀かな
岩鼻 のこ
亡き父の遊びし里に夕雲雀
木村カズ
青雲を喰らうが如く雲雀飛ぶ
小湊 八雲
田ひろびろと雲雀とわたし二人きり
佐藤香珠
ひばり鳴くあれ今わたし寝てたよね
書夏太浪
雲雀出でてブラウニングの朝かな
房総とらママ
逆縁の焼場のけむり揚雲雀
堀雅一
ドローン便の着地を囃す揚雲雀
比良山
ピーチュルやひばり走りて風と消ゆ
中島裕貴
ピーチュルル子らを見下ろし舞う雲雀
寺木 風宣
空あふぐいづくに鳴くや揚雲雀
廣田惣太郎
揚げ雲雀鳴き声残し急降下
宮沢 韋駄天
帰郷路に裂かれる胸に雲雀沁む
烈火敬焔
大空をステージにして雲雀鳴く
中村 自在
畦道の高みに望む雲雀声
岡塚敬芳
落雲雀己が高鳴き超へるごと
虎穴虎児
天辺はここと決めたり揚雲雀
まきうち祐
イカロスの名に恥ぢぬ丘雲雀降る
亀田荒太
雲雀鳴く吾も泣く故生きてゐる
田辺富士雄
夕雲雀里に厨の煙立つ
とりゆふ
迷わずに魂を届けよ揚雲雀
蓮田つばき
天気図と睨めっこする雲雀かな
上村茶娘
子らはしゃぐ瑞穂の国よ雲雀鳴く
小田嶋隅雀
ひらり舞ふ風と雲雀の鳴き合わせ
飾る
雲雀飛ぶ土手は残念舗装され
ださんさん
姦しく空に落ち行く雲雀かな
二丁目
蒼天を冀ふかな揚雲雀
リカ
曙光差す一気の高み揚雲雀
風遊び為参
透徹や鳴けぬ雲雀の目よ聲よ
宮井そら
揚雲雀いま大空の黒天に
愛燦燦
農具置き天空見上げ雲雀鳴く
滝美音
土手に座し滞空の雲雀ひいちぶ
小手川とし
揚雲雀赤城山麓独り占め
呆け鴉
大空に雲雀の出入口あり
吽田のう
雲雀舞う空の音色に田も醒めて
枡矢書右衛門
グラデーション一条引きて夕雲雀
佐藤 位相朗
屋根目指す乳歯彼方は叫天子
藤原米酢
一直線雲となりゆく雲雀かな
今林快波
落雲雀さらさら光る遠い川
かん かんし
天空へ大地を吊りて鳴く雲雀
坂土海夏
落雲雀巣から五丈のF難度
吟 梵
田んぼ道鳴くや雲雀の見えずして
kikuti-aya
雲雀鳴けよ鳴けこの悪夢消し去る如く
haru_sumomo
境界線無き空揚雲雀びゅん
古庄 萬里
ビバルヂィーをいつも奏でている雲雀
せいち
草原の秘密雲雀の雛三羽
メディックス千里
直上し直下したるや揚雲雀
dragon
雲雀鳴き空に祖母の面影あり
弓田 孝高
揚雲雀われのこゝろを導けり
佐竹紫円
揚雲雀有為の奥山越えぬべし
羽柳武助
ノーサイド見上ぐる空に初雲雀
嵐菜
目覚めれば雲雀の声す草の原
大 広秋
雲雀の子我に気づきて巣に帰る
稲光虎介
降りるのを待ち侘びるやうゐる雲雀
栗山おかか
揚雲雀真上辺りか秘密基地
虹岡思惟造
雲雀とて一羽の声は独り言
どれみすみ
遠き日の想いのなかで雲雀鳴く
香取扇公
鳴き声は彼の山越えし雲雀かな
深澤 健聖
私にも誘っておくれよ雲雀ちゃん
おんあいす
高齢の歌声響き舞う雲雀
渡辺 小豆
高らかな空見つめると舞う雲雀
一 華楓
揚雲雀見あげし我の目は細し
菅原ゆう
草原に消えては飛んで鳴く雲雀
青木豊実
あんなにも空の恋しいひばりかな
まー坊
光芒を雲雀が上る雨上がり
雅屋少将
合格の知らせ届きぬ雲雀鳴く
春のまさ女
放埓に上へ下へと雲雀舞う
いしかわはなひろ
停空に鳴きも一点雲雀鳴く
雅由
この空にもガラスの天井揚雲雀
水蜜桃
次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
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選者コメント
夏井いつき選
兼題:雲雀
傍題:揚雲雀・落雲雀・初雲雀・ひめひな鳥・告天子・叫天子
◆まずは、季語「雲雀」の生態としてどうなんだろう? という句が散見しました。
おおかたは草原や河原、農耕地などに生息し、地表に巣を作るのが「雲雀」なので、以下のような状況が描かれている句には違和感を持ちます。
・ 雀や烏のように電線に止まったり、人家の軒やベランダに巣がある
・ 木や岩などのてっぺんで鳴く
・ 群れを作っている
また、明らかに室内や車内で雲雀の姿は見えない、声も聞こえないだろうという状況の句も、不自然。動物や植物の季語については、最低限の情報を仕入れてから、句作に入ることを強くオススメします。
◆とはいえ、以下のような特徴を理解した上で書いたとしても、あまりにもそのまま書いてしまうと、類想の沼にズッポリ落ちてしまいます。
・ 空高く舞い上がる (そして点となる)
・ 空へ吸い込まれるよう 溶けてゆきそう
・ ホバリング
・ 急降下する 真っ逆さま
・ 冠羽を立てて鳴く
・ 巣の場所がわからないように巣から離れたところに降りる
→ 飛び立つときは巣のあるところから……(巣がバレる)
・ 鳴き声は……
→ 美しい 明るい 眩しい 何かの曲のよう
→ 姦しい うるさい おしゃべり 早口
→ ピーチュル ピーチク 日一分、日一分 利取る、利取る(聞きなし)
季語についてのこれらの情報を土台として、更なるオリジナリティーや精度の高いリアリティを一匙分加える。ここが大事なポイントです。
◆また、「雲雀」という文字は入ってますが、以下の季語は意味が違います。兼題の季語をしっかりと調べることは大前提。手を抜かない習慣を身につけましょう。
・ 「雲雀笛」……人事で別季語
・ 「雲雀の巣」……「鳥の巣」の傍題
・ 「草雲雀」……秋の虫
・ 「雲雀東風」……天文で別季語
・ 「田雲雀」……田雲雀はセキレイ科で秋の季語(雲雀はヒバリ科で春の季語)
◆類想の中で、特徴があったのは、固有名詞との取り合わせ。
・ イカロス
・ ハイドン(弦楽四重奏曲第67番 通称「ひばり」) ヴィ(ビ)ヴァルディ
・ 美空ひばり
太陽を目指して上がることからの「イカロス」。ハイドンの弦楽四重奏曲第67番 通称「ひばり」、そしてヴィヴァルディの「四季」への連想。更に、ズバリ「美空ひばり」。これらの固有名詞と取り合わせる句が、かなりありました。このラインで、脱ボンするのは、ハードルが高かったですね。
◆「ひばり」は、様々な詩歌にも取り上げられる素材ですから、名詩名歌へのオマージュもかなりありました。
「うらうらに照れる春日に雲雀あがり情悲しも独りしおもへば」(大伴家持)
「(抄)片岡に露みちて/揚雲雀なのりいで」(ブラウニング「春の朝」上田敏訳より)
「(抄)いちめんのなのはな/ひばりのおしやべり/いちめんのなのはな」(山村暮鳥「風景 純銀もざいく」より)
「(抄)ひばりのす/みつけた/まだたれも知らない」(木下夕爾「ひばりのす」より)
本歌取りはかなり高度なテクニック。本歌の内容をなぞっただけでは自分の作品とはいえませんし、本歌から離れすぎると意図が伝わらなくなる。俳筋力がしっかりと身につけてから挑むべきかなと、思います。
俳筋力のトレーニングに近道はありません。コツコツと続けてまいりましょう。
※今回の兼題「雲雀」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4887句、投句人数1743人となりました。以下、類想句の一覧です。