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中級者以上結果発表

2025年1月20日週の兼題

雲雀

【曜日ごとに結果を公開中】

【類想】

選者コメント

夏井いつき

兼題:雲雀

傍題:揚雲雀・落雲雀・初雲雀・ひめひな鳥・告天子・叫天子


◆まずは、季語「雲雀」の生態としてどうなんだろう? という句が散見しました。

 おおかたは草原や河原、農耕地などに生息し、地表に巣を作るのが「雲雀」なので、以下のような状況が描かれている句には違和感を持ちます。

 ・ 雀や烏のように電線に止まったり、人家の軒やベランダに巣がある

 ・ 木や岩などのてっぺんで鳴く

 ・ 群れを作っている

また、明らかに室内や車内で雲雀の姿は見えない、声も聞こえないだろうという状況の句も、不自然。動物や植物の季語については、最低限の情報を仕入れてから、句作に入ることを強くオススメします。


◆とはいえ、以下のような特徴を理解した上で書いたとしても、あまりにもそのまま書いてしまうと、類想の沼にズッポリ落ちてしまいます。

 ・ 空高く舞い上がる (そして点となる)

 ・ 空へ吸い込まれるよう 溶けてゆきそう

 ・ ホバリング

 ・ 急降下する 真っ逆さま

 ・ 冠羽を立てて鳴く

 ・ 巣の場所がわからないように巣から離れたところに降りる

    → 飛び立つときは巣のあるところから……(巣がバレる)

 ・ 鳴き声は……

    → 美しい 明るい 眩しい 何かの曲のよう 

    → 姦しい うるさい おしゃべり 早口

    → ピーチュル ピーチク 日一分、日一分 利取る、利取る(聞きなし)

季語についてのこれらの情報を土台として、更なるオリジナリティーや精度の高いリアリティを一匙分加える。ここが大事なポイントです。


◆また、「雲雀」という文字は入ってますが、以下の季語は意味が違います。兼題の季語をしっかりと調べることは大前提。手を抜かない習慣を身につけましょう。

 ・ 「雲雀笛」……人事で別季語

 ・ 「雲雀の巣」……「鳥の巣」の傍題

 ・ 「草雲雀」……秋の虫

 ・ 「雲雀東風」……天文で別季語

 ・ 「田雲雀」……田雲雀はセキレイ科で秋の季語(雲雀はヒバリ科で春の季語)


◆類想の中で、特徴があったのは、固有名詞との取り合わせ。

 ・ イカロス  

 ・ ハイドン(弦楽四重奏曲第67番 通称「ひばり」) ヴィ(ビ)ヴァルディ

 ・ 美空ひばり

太陽を目指して上がることからの「イカロス」。ハイドンの弦楽四重奏曲第67番 通称「ひばり」、そしてヴィヴァルディの「四季」への連想。更に、ズバリ「美空ひばり」。これらの固有名詞と取り合わせる句が、かなりありました。このラインで、脱ボンするのは、ハードルが高かったですね。


◆「ひばり」は、様々な詩歌にも取り上げられる素材ですから、名詩名歌へのオマージュもかなりありました。

「うらうらに照れる春日に雲雀あがり情悲しも独りしおもへば」(大伴家持)

「(抄)片岡に露みちて/揚雲雀なのりいで」(ブラウニング「春の朝」上田敏訳より)

「(抄)いちめんのなのはな/ひばりのおしやべり/いちめんのなのはな」(山村暮鳥「風景 純銀もざいく」より)

「(抄)ひばりのす/みつけた/まだたれも知らない」(木下夕爾「ひばりのす」より)


 本歌取りはかなり高度なテクニック。本歌の内容をなぞっただけでは自分の作品とはいえませんし、本歌から離れすぎると意図が伝わらなくなる。俳筋力がしっかりと身につけてから挑むべきかなと、思います。

 俳筋力のトレーニングに近道はありません。コツコツと続けてまいりましょう。


※今回の兼題「雲雀」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4887句、投句人数1743人となりました。以下、類想句の一覧です。


類想一覧(選外)

  • 一歩ずつ急がず憩う落雲雀

    桐山榮路村(キリヤマエジソン)

  • ああ愉快ドローンの粋よ揚雲雀

    家古谷 硯翠

  • 美空にも魏空の中も揚雲雀

    リーガル海苔助

  • 農作業止めて指さし雲雀だよ

    金子あゆか

  • 弾丸のごとき雲雀や虫ぱくり

    だいごろう

  • 懐かしい里山の帰途揚雲雀

    小和布

  • 畦道の風やわらかや初雲雀

    竹内ユキ

  • コバルトのみ空へ雲雀溶けにけり

    かぬまっこ木ノ芽

  • 止まずとも落ちついてゆく雲雀の音

    たこ山焼之輔

  • 老楽の止まぬお喋り雲雀居り

    無何有

  • 雲雀鳴き手のひら空へ笑む子らよ

    ゆぃ

  • 我が行為空から見張る雲雀かな

    露崎一己句

  • 見上げる子あそこあそこと初雲雀

    木村となえーる

  • いつせいに発ちし雲雀のその跡に

    碧萃生

  • 雲雀たち飛行機のよう雲を斬る

    アケマシテオメデトウゴザイマス

  • 汽笛にも似た雲雀らと発車かな

    天鳥そら

  • 万物や皆恋せよと揚雲雀

    通事世露詩句

  • 鳴き声に目を凝らしをり揚雲雀

    中野風鈴

  • 山を見ず空見ずされど雲雀飛ぶ

    宇宙星人やばば

  • 木造の大屋根リング雲雀鳴く

    たこぼうず

  • 俺様のシマを自在に揚雲雀

    今野佑紀

  • 雲雀鳴く蕾ふくらむ里山よ

    岩本道人

  • 揚雲雀音程高く歌ふなり

    白井百合子

  • 塹壕へ金烏の使者として雲雀

    感受星 護

  • 点となりし雲雀捉えて500ミリ

    うみのひつじ

  • 雲雀かな声はすれども姿無し

    小島神泉

  • 肥沃野に落ち声渡る雲雀かな

    松元転石

  • 揚雲雀追うて腰延ぶ背ナの延ぶ

    若葉わかば

  • ドローンをじっとみる雲雀かな

    月見太郎

  • 無防備の雲雀巣覗く野球子よ

    清水千種

  • 燦燦と降り注ぐこゑ揚雲雀

    余田酒梨

  • 雲雀鳴く乳を欲しがる赤子泣く

    山口康煌

  • どこまでも燃えずに舞ふや揚雲雀

    喜寿の嵐

  • 大の字で目に焼き付けん揚雲雀

    高市青柘榴

  • ベランダの鉢から空へ雲雀かな

    鳳凰美蓮

  • 千年の静寂を破り揚雲雀

    村上 継鳥

  • スタッカートのごと話すなり初雲雀

    源早苗

  • 追い風の朝のジョギング雲雀鳴く

    林としまる

  • 天辺を突き抜けてなほ揚雲雀

    おおにしまこと

  • 一生懸命下手くそ愛でる雲雀かな

    山海動静

  • 静寂を破る兆しに舞う雲雀

    中にきゅお

  • 雲雀一羽天に止まってをり見えず

    倉持くらもん

  • 鳴き継げる彼方此方の雲雀かな

    谷村幸甚

  • 覗き込む雲雀の横顔母みたい

    戸田なお

  • 日によばれ名乗りいでたる雲雀かな

    渡嘉敷五福

  • 揚げ雲雀吾の夢抱きふわり発ち

    藤村 一寿

  • ここにいるここにいるよと雲雀かな

    おかえさき

  • イカロスの轍は踏まぬと揚雲雀

    黒澤墨青

  • 雲雀飛ぶ肩の高さで声残る

    WEDA ASH

  • ハムスターの本復の朝雲雀鳴く

    奈良岡歩

  • 尾羽を振りいざ飛び立つや揚げ雲雀

    卓司

  • 落ちてきし雲雀は巣までとつとつと

    しおやま句吟子

  • 雲雀どこ?久方ぶりの空青し

    松永恕淳

  • 舞い上がり縄張り示す雲雀かな

    上津 力

  • 雲雀の生美空ひばりの永遠歌

    月谷 日耀

  • 雲雀舞う空ヴィヴァルディの旋律

    働太蔵

  • 揚雲雀ドンファンに似て饒舌や

    羅美兎

  • 落雲雀声を吸い取る青天井

    川島欣也

  • ジョギングの土手や雲雀の声聞いて

    希布

  • ひばりの子親はどこまで揚がるやら

    猪飼 篤

  • 愛燦燦と歌う草原の雲雀かな

    くろねこ

  • 大空へ飛べ声響け揚げ雲雀

    服部鉛筆

  • 呼びかける雲雀の声は雲の中

    恵翠善

  • ピチュピチュとひばり烈しや子のあらむ

    スマイリーk

  • 揚雲雀見失いたる暈の内

    雑魚寝

  • 土手散歩雲雀奏でるビバルディ

    内田高雲

  • 雲雀野や土煙舞う野球大会

    鱈 瑞々

  • 草むらの冠羽逆立つ雲雀かな

    大谷 走郎

  • ヒーツヒーツせつかち鳥の雲雀かな

    よかわもりお

  • 蒼穹を占拠したりと揚雲雀

    やっせん坊 池上

  • 鳴き声を空に残して雲雀落つ

    塩野谷慎吾

  • 顔上げよ空を見上げよ雲雀啼く

    富山の露玉

  • 青空へてっぺん探す雲雀かな

    瓢箪鮎

  • 揚ひばり飛行機雲を真っ二つ

    田辺ふみ

  • 天網のほつれて雲雀一直線

    勇緋ゆめゆめ

  • 揚雲雀風を引きつれ見る見るに

    Early Bird

  • スマホにて雲雀の声を聞きつつ投句

    笑酔

  • 揚雲雀ただひたむきに上へ上

    ゆかりん

  • お告げのやうたしかに耳に揚げ雲雀

    あらいすみこ

  • 雲雀よイカロスの胸中いかに

    三無季生

  • 木屋根のリングあかるき揚雲雀

    坪山紘士

  • だうだうと立てる冠羽や雲雀の子

    いちすぺ

  • 雲雀舞ふ小さき冠の気品かな

    服部勝枝

  • ひとしきり鳴きて雲雀の堕ちにけり

    岩田遊泉

  • 雲雀なる鳥があちこちいたらしい

    平山仄海

  • 叫天子地に点を視る帰巣かな

    嶺乃森夜亜舎

  • 初雲雀あてなき恋のホバリング

    風間 燈華

  • 手庇しや米粒大の雲雀追ふ

    荒木響

  • 陽動す地の雲雀こそ健気なれ

    森2五歩

  • 振り向けば驚き隠せぬひばりかな

    中田ことみ

  • 声聞けど未だ見ぬ君雲雀かな

    沢瀉

  • 子を守る気概や雲雀高く鳴き

    大関 邦友

  • 揚雲雀「吾ここぞ」と本気のアリア

    新井ハニワ

  • 雲雀めが天の番所に付け届け

    喜田紫陽

  • 点となりこゑ天頂へ初ひばり

    ひろ志

  • 雲雀かな吸い込みそうな青い空

    井口あき子

  • 天翔ける雲雀雄々しく謳いおり

    北山 烏兔

  • 初雲雀納屋から農具出す合図

    伊藤てまり

  • 雲雀の鳴き声を聞いてる暇なんてありゃしない

    羅蒐

  • わかれうたそんなん嫌や啼く雲雀

    雅蔵

  • 休耕の田にも畑にも雲雀かな

    みやうちあけみ

  • アデと指す青空の先に鳴く雲雀

    武藤睦礼

  • 青空へ雲雀鳴けども我ひとり

    みつき 夏

  • 朝煙抜けて天向く雲雀かな

    島陽広

  • 太陽や利子くれ利取る雲雀

    よぶこどり

  • ふるさとの畑や昼餉の揚雲雀

    富良里旅人

  • 旅さなか雲雀行き交う草原へ

    はっしー

  • 鳴く声に偲ぶ故里揚雲雀

    髙見艀舟

  • 出不精に早く動けと啼く雲雀

    橋野こくう

  • 天空に小さき点とす揚雲雀

    円美々

  • 幾本も雲雀の竿の立ちにけり

    一二 三四郎

  • ヴィヴァルディ口ずさむ野辺揚雲雀

    みしまちづる

  • 揚雲雀そこから海が見えるかい

    星野 威

  • そんなにも喜べるのか揚雲雀

    αベット

  • 甲高き雲雀の声や青き空

    山田翔子

  • 敷舞台三度高鳴く揚雲雀

    くろけん

  • 嗄れる声それも性とて雲雀鳴く

    はぐれ雲

  • 子や畑を授かり澄ます揚雲雀

    桐山榮路村

  • ランドセル行く畦道の雲雀かな

    岩鼻 のこ

  • 亡き父の遊びし里に夕雲雀

    木村カズ

  • 青雲を喰らうが如く雲雀飛ぶ

    小湊 八雲

  • 田ひろびろと雲雀とわたし二人きり

    佐藤香珠

  • ひばり鳴くあれ今わたし寝てたよね

    書夏太浪

  • 雲雀出でてブラウニングの朝かな

    房総とらママ

  • 逆縁の焼場のけむり揚雲雀

    堀雅一

  • ドローン便の着地を囃す揚雲雀

    比良山

  • ピーチュルやひばり走りて風と消ゆ

    中島裕貴

  • ピーチュルル子らを見下ろし舞う雲雀

    寺木 風宣

  • 空あふぐいづくに鳴くや揚雲雀

    廣田惣太郎

  • 揚げ雲雀鳴き声残し急降下

    宮沢 韋駄天

  • 帰郷路に裂かれる胸に雲雀沁む

    烈火敬焔

  • 大空をステージにして雲雀鳴く

    中村 自在

  • 畦道の高みに望む雲雀声

    岡塚敬芳

  • 落雲雀己が高鳴き超へるごと

    虎穴虎児

  • 天辺はここと決めたり揚雲雀

    まきうち祐

  • イカロスの名に恥ぢぬ丘雲雀降る

    亀田荒太

  • 雲雀鳴く吾も泣く故生きてゐる

    田辺富士雄

  • 夕雲雀里に厨の煙立つ

    とりゆふ

  • 迷わずに魂を届けよ揚雲雀

    蓮田つばき

  • 天気図と睨めっこする雲雀かな

    上村茶娘

  • 子らはしゃぐ瑞穂の国よ雲雀鳴く

    小田嶋隅雀

  • ひらり舞ふ風と雲雀の鳴き合わせ

    飾る

  • 雲雀飛ぶ土手は残念舗装され

    ださんさん

  • 姦しく空に落ち行く雲雀かな

    二丁目

  • 蒼天を冀ふかな揚雲雀

    リカ

  • 曙光差す一気の高み揚雲雀

    風遊び為参

  • 透徹や鳴けぬ雲雀の目よ聲よ

    宮井そら

  • 揚雲雀いま大空の黒天に

    愛燦燦

  • 農具置き天空見上げ雲雀鳴く

    滝美音

  • 土手に座し滞空の雲雀ひいちぶ

    小手川とし

  • 揚雲雀赤城山麓独り占め

    呆け鴉

  • 大空に雲雀の出入口あり

    吽田のう

  • 雲雀舞う空の音色に田も醒めて

    枡矢書右衛門

  • グラデーション一条引きて夕雲雀

    佐藤 位相朗

  • 屋根目指す乳歯彼方は叫天子

    藤原米酢

  • 一直線雲となりゆく雲雀かな

    今林快波

  • 落雲雀さらさら光る遠い川

    かん かんし

  • 天空へ大地を吊りて鳴く雲雀

    坂土海夏

  • 落雲雀巣から五丈のF難度

    吟  梵

  • 田んぼ道鳴くや雲雀の見えずして

    kikuti-aya

  • 雲雀鳴けよ鳴けこの悪夢消し去る如く

    haru_sumomo

  • 境界線無き空揚雲雀びゅん

    古庄 萬里

  • ビバルヂィーをいつも奏でている雲雀

    せいち

  • 草原の秘密雲雀の雛三羽

    メディックス千里

  • 直上し直下したるや揚雲雀

    dragon

  • 雲雀鳴き空に祖母の面影あり

    弓田 孝高

  • 揚雲雀われのこゝろを導けり

    佐竹紫円

  • 揚雲雀有為の奥山越えぬべし

    羽柳武助

  • ノーサイド見上ぐる空に初雲雀

    嵐菜

  • 目覚めれば雲雀の声す草の原

    大 広秋

  • 雲雀の子我に気づきて巣に帰る

    稲光虎介

  • 降りるのを待ち侘びるやうゐる雲雀

    栗山おかか

  • 揚雲雀真上辺りか秘密基地

    虹岡思惟造

  • 雲雀とて一羽の声は独り言

    どれみすみ

  • 遠き日の想いのなかで雲雀鳴く

    香取扇公

  • 鳴き声は彼の山越えし雲雀かな

    深澤 健聖

  • 私にも誘っておくれよ雲雀ちゃん

    おんあいす

  • 高齢の歌声響き舞う雲雀

    渡辺 小豆

  • 高らかな空見つめると舞う雲雀

    一 華楓

  • 揚雲雀見あげし我の目は細し

    菅原ゆう

  • 草原に消えては飛んで鳴く雲雀

    青木豊実

  • あんなにも空の恋しいひばりかな

    まー坊

  • 光芒を雲雀が上る雨上がり

    雅屋少将

  • 合格の知らせ届きぬ雲雀鳴く

    春のまさ女

  • 放埓に上へ下へと雲雀舞う

    いしかわはなひろ

  • 停空に鳴きも一点雲雀鳴く

    雅由

  • この空にもガラスの天井揚雲雀

    水蜜桃

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

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