類想一覧(選外)
啓蟄で何やら蠢く三島畑
午 勢至
啓蟄や引越し予約塞がりし
宏楽
啓蟄や畑仲間に種もらひ
理真
啓蟄や耕運機出し試運転
早坂 一周
啓蟄のひかりの中に見たものは
富良里旅人
啓蟄のベランダ卵を産む鳩
八光地蔵
啓蟄のきざしにょきにょき古き鉢
つづきののんき
啓蟄やそろそろ我も蠢きぬ
春よ来い
啓蟄や地球がもそもそ動き出す
柊瞳子
啓蟄や両手に衣裳迷う妻
重明
啓蟄や本腰入れて庭しごと
花咲めだ香
啓蟄や手の皴つまむ孫の指
渡部 あつし
啓蟄や杵柄ふるう父の鍬
山川土時
啓蟄や吾子はじめての外歩き
愚老
啓蟄や鼓動高鳴る初出社
岡崎秀惠
啓蟄に舗装道路を掘り返し
ミント・スチュワート
啓蟄に反し世間に引きこもる
小田和子
畑の音遠く近くに啓蟄や
石原しょう
糠床に交わす啓蟄葉物から
丘るみこ
啓蟄や十年ぶりの同窓会
中華風
啓蟄の安らぐ午後のティータイム
道楽人生
啓蟄やかさぶた赫くグラデーション
安達りんだう
啓蟄やまづ農機具の試運転
荒 一葉
啓蟄や吾もいざ動かん吾の庭へ
かべショージ
啓蟄ややってみようか英会話
村上薫
またぞろの道路工事か啓蟄に
小林俊行
啓蟄や雀の群れの下り立つ地
ハルノ花柊
啓蟄の我終わりなき引きこもり
榊昭広
こころ溶けネコと戯る啓蟄や
月谷 日耀
啓蟄に矮鶏は頻りに土つつき
神谷史記
啓蟄やおろしたてのボーダーで行く
るんるん十七音
啓蟄や呼ばれ立つ背に力入る
山海動静
啓蟄や断捨離続き始めるか
咲 まこ
ルーペ持ち昆虫学者啓蟄さ
WEDA ASH
啓蟄や別れを前にこころ決め
枡矢書右衛門
啓蟄やどくんどくんの躍動感
小和布
啓蟄や十年籠もり就職す
入道 まりこ
啓蟄やまずは髪切る予約から
とおやまみんく
啓蟄や隣町まで歩を伸ばし
飯沼比呂倫
啓蟄や税務署前に長き列
永田千春
啓蟄や雨後の土栗山肌に
PONホンダ
啓蟄やオープン戦の太鼓鳴る
柴桜子
啓蟄や学びが好きな五歳の児
豊岡重翁
啓蟄や黄土の匂いたゆたひて
ゆかりん
啓蟄に見よ面白きたのしき世
村上熊子
啓蟄や草刈りの音そこかしこ
森の真林
啓蟄の地球の息吹感受せり
冬島 直
啓蟄や土の匂いが蠢きて
黒田 修一
啓蟄を気に留めもせずせかせかと
砂月みれい
啓蟄や鳥鳴く声の平和なり
ほんちゃん
啓蟄や園児の列の大人びて
栗緒音
啓蟄や覗きたくなる戻り風
小林乏硯
啓蟄や保母の付添う園児列
髙見艀舟
啓蟄や地面に群れる鳥日がな
笑酔
啓蟄の実況あれば散歩かな
黒麹 糀
啓蟄や生命宇宙汎種説
須川えい
啓蟄や我慢の虫を解き放つ
鶴岡木の葉
啓蟄や土手をピヨピヨサンダルと
夢雨似夜
啓蟄や菰を外した松並木
香西京子
啓蟄の柔らかき土に降る雨の
今井雨秋
啓蟄やふらりふわりと登園路
弓田 孝高
啓蟄や旅のカタログそろへたり
滝美音
啓蟄や合格と告ぐ子に焼く卵
吉永那夫子
啓蟄や地面に上がり新世界
そめやまさみ
癌幾重啓蟄迎え母庭に
高石蓬莱
啓蟄や我が身叱咤す吾傘寿
薄安
啓蟄や見知らぬ土地への内示出る
出水ゆみ
啓蟄の蠢き風に含まれり
山中えいみ
啓蟄や誘い合う子の声弾む
スマイリーk
啓蟄を踏んづけている土踏まづ
妙
啓蟄や吾子ハイハイの愛しさよ
桃姫
啓蟄や我が家の妻は引きこもり
あらい ゆう
啓蟄や小鳥せわしく土を蹴る
宮沢 韋駄天
啓蟄や忘れ物なしいざ行かん
小鳥コ
啓蟄や散歩時間の早まりぬ
酔蚊眼
啓蟄日庭石の下気配なし
寺木 風宣
啓蟄や恩師へ伝えたき言葉
くつの した子
啓蟄やステップ軽く旅の空
武蔵野青空
アレクサに啓蟄問うや怠け者
塚本隆二
啓蟄や狭庭に穴の二つ三つ
竹内ユキ
啓蟄や癇癪虫もぴくぴくと
しおやま句吟子
啓蟄や新生活の門出かな
スズランのチイ
啓蟄やシャツのボタンをふたつあけ
橘散里
けいちつが書けぬ啓蟄の招待状
斉藤百女
啓蟄の追う鼻先の遊び猫
雅由
合格の子は啓蟄の朝巣立ち
みゆむうしば
啓蟄や漸く庭の動きだす
池田 凜
啓蟄や舌でまさぐる親不知
樋口滑瓢
鳥群れてトラクター追う啓蟄や
森2五歩
啓蟄や座した土手の湿り具合
小手川とし
顔出したばかりの草むしる啓蟄
正念亭若知古
啓蟄や鳥の群声風を切る
三島ひめばしょう
啓蟄や貸農園の鍬の泥
こきん
啓蟄や吾ももぞもぞとサナギ似て
川口里山
啓蟄の蠢く虫よ四匹余
長操
啓蟄や空いて三年の軒下に
むらぴ
驚蟄啓途するぞ負笈の旅を
蔵書室主人
目覚めては啓蟄むかえ気もそぞろ
恵翠善
朝に葉の緑映えばえ啓蟄や
おんあいす
啓蟄や昇る土の香青天へ
千曜 桜
啓蟄や声変わりしてはにかむ子
森 日美香
啓蟄や一人で乗れた一輪車
みつき 夏
啓蟄のバンカーショット砂弾む
宝塚御殿子
啓蟄に学び舎を出て未来進む
畑 けん
啓蟄や雀のつつく壁の穴
桃香
啓蟄や鳥の褒美となる小虫
稲光虎介
啓蟄に吾も布団から這い出して
藤村 一寿
こも外す庭師の手甲啓蟄や
雨戸 ゆらら
啓蟄や心に虫の如きもの
渡辺宵雨
啓蟄の土丹念にほじる犬
中田邦光
菰外す手に啓蟄の微温き雨
杉岡ライカ
行ってきますと虚をつく歩み啓蟄
中にきゅお
啓蟄の嘴より垂らしゆく烏
明神おぼろ月
啓蟄や大地膨らみ農急ぐ
満の湯
幾億の虫喰われてなお啓蟄か
猫丸
啓蟄やそろりとしゃくり虫出ずる
茶
芝刈って肩揉みほぐす啓蟄や
三天朱印
啓蟄の朝や歩数計をオン
一井かおり
啓蟄の地下街ぬけて催事場
紅 珊瑚
啓蟄やおんもに敵はおほかれど
岡崎佐紅
啓蟄の古苑に常も無く降雨
佐藤俊夫
朝日射す足取り軽く啓蟄よ
祐 紀杏里
啓蟄や弱気の虫は居続ける
木寺 仙游
啓蟄や仲間と共にウォーキング
タケザワサトシ
啓蟄やおもしろ旅へ老ふたり
近藤マタネ
啓蟄の牧場の風やヴィヴァルディ
椿泰文
啓蟄の雨降るまじや浸る土
家古谷 硯翠
啓蟄の校庭脇ではしゃぐ子ら
木村カズ
啓蟄や風に薫や頬をなで
内田高雲
啓蟄や鬱の子連れてバスの旅
中井無心
啓蟄や鼻先震わす犬の顔
さいとう歌月
啓蟄の虫の如くに朝日浴び
伊勢乃幸牛
啓蟄の我ら師へ色紙送りをり
くじら12号
側溝ザワワ啓蟄の羽虫涌く
国東町子
啓蟄の土に這い広がる野草
おのまい
啓蟄や土嗅いで犬ハクション
菅原ゆう
啓蟄や旅に出なんと髪を切る
渡嘉敷五福
啓蟄の虫引き返しひきこもり
森 佳月
登山靴啓蟄なりて紐変える
康寿
啓蟄の踏みしめし土ふかふかと
増田楽子
啓蟄や日の目見た子に食われた子
太井 痩
啓蟄を待ち兼ねモグラ土を盛る
高市青柘榴
啓蟄やひきこもりの子コンビニへ
案浦エミリー
啓蟄の土の香ふわり鍬を打つ
高本蒼岑
啓蟄の大地に鼓動素足跳ね
白倉黄鶺鴒
啓蟄に小塚おちこち田んぼかな
余熱
啓蟄や草木も耐えて出にけり
石内宏明
啓蟄や土を押しのけ虫の声
松尾芭蕉
啓蟄やかくれんぼの子「まあだだよ」
山田翔子
啓蟄やリネンのシャツに風抜けて
五島潮
啓蟄や声なき歓喜の気配あり
サツキトラヲ
啓蟄や古希の体にムチを打つ
岡田いっかん
啓蟄の朝日やわらか地へ温度
清水千種
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
◆今回の兼題「啓蟄」は、時候の季語です。
歳時記によると、「(啓蟄の)地虫そのものも指す」と解説しているものも稀にあるようですが、「啓蟄=二十四節気の一つで三月六日ころ」の意(二〇二五年は三月五日)ですから、時候の季語と解するのが妥当です。
時候の季語の「一物仕立て」はかなり高度ですから、基本的には「取り合わせ」になります。どんなモノを観た、聞いた、触った、味わった時に、「虫が地中から出てくるような頃だなあ」と感じるのか。そこに、実作のヒントがあります。
◆「啓蟄日」「啓蟄期」という使い方をした句も見受けられましたが、「啓蟄」そのものが時候の季語だと考えれば、敢えて「~日」や「~期」をつける必要はありません。
下五に「啓蟄」を配すると、一音足りないので「啓蟄日」にしている? ……と疑われるケースも多々ありました。
下五に四音の季語がきてしまう時は、語順や型を工夫することで解消できますので、「啓蟄日」「啓蟄期」など安易な解決法に頼らないことが肝要。俳筋力のトレーニングにもなりますので、頑張ってみましょう。
◆更に、これもいつも書いていることですが、
「啓蟄」だからこその類想句もあれば、どんな兼題でも必ず出てくるタイプの類想句もありました。
ひとまず、今回の投句から、季語「啓蟄」の類想についてまとめたものを以下に記します。参考にして下さい。
イメージ
・ 明るさ ひかり 生命力 躍動
・ 未来 希望
・ 恋の予感
啓蟄の頃は……
・ 合格 不合格
・ 卒業 進学 就職 異動 → 旅立ち 引越し
・ 納税 年度末 決算
・ まだ寒い (逆に)汗ばむくらい
・ いろいろな花も咲く 花粉も飛ぶ
虫たちの目覚め からの連想
・ まだ眠い 寝坊
・ 赤子の産声
・ 卵(玉子)
虫たちが地上に出てくるからの連想
・ 地下鉄 地下街
・ (逆に)引きこもり 不登校
・ 大地の息吹き 鼓動
・ 土が膨らんでくる → 地球など大きな景を膨らむと捉える
・ 庭は穴だらけ 土竜の穴
・ 土やら虫やらいろいろ蠢く
動物や人間
・ 犬や猫が土を嗅ぐ 掘る
・ 鳥たちがその虫を狙う 啄む
・ 農作業や庭いじり 草むしり
・ 庭木の菰をはずす
・ 耕運機 鍬 鋤
・ 髪を切る 染めてみる
・ おろしたての靴 (パステルカラーなど春らしい)服
・ 気持ちよく歩く 走る 自転車のペダルを漕ぐ
・ 旅の計画を立てる 旅に出る
・ (陽気が良くなり)眠い あくびをする
◆兼題に取り組む時は、どんなジャンルの季語で、どんな本意を持っているのか。歳時記を調べてから句作にかかりましょう。歳時記を一冊、手の届くところに置いておくことをおススメします。特に、中級コースに何度も挑んでいるけど、なかなか並選に入らない! という方には、特に強くおススメしておきます。
※今回の兼題「啓蟄」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数5028句、投句人数1783人となりました。以下、類想句の一覧です。