類想一覧(選外)
村の夜「火の用心」の声冴ゆる
原島ちび助
木星の瞬き冴ゆる暗夜かな
尾花 由紀子
風冴ゆる無人ホームや首ぬくし
さくらバディ
暮六つに冴ゆる梵鐘畦渡る
西町花冠
冴ゆる夜やペダル鈍らすイエナリエ
遊子眼鏡
冴ゆる朝東の空に細い月
岡田いっかん
冴ゆる朝白き世界へ踏み出しぬ
くちなしの香
犬吠に砕ける波や風冴ゆる
松葉学而
星冴ゆる孤空にそびゆ天守閣
竹の子
集まれる朝の体操冴ゆる音
くろけん
点滴の一粒ごとに月の冴ゆ
富田健朗
月冴ゆる街の間の街灯り
とめいろぉ
冴ゆる駅ポッケの手には家の鍵
雛めぐみ
冴ゆる夜の駅に奏でるカンパネラ
うに子
無人駅イルミネーションの青冴えて
尚茶
黄昏に靴音冴ゆるシャッター街
嵐菜
夜風冴ゆ貨車の遠音頬を刺す
成瀬 朽木
闇の中汽笛過ぎゆく冴ゆる月
高木 美月
夜冴えて研ぎ澄まされる心の刃
津田燕子花
空気冴ゆ試験終わりてココア飲む
どらまにあ
明けやらぬ氏神社手水冴ゆ
太之方もり子
冴ゆる夜や道場出れば星あまた
西町彰子
冴ゆる空君の面影探す日々
山本マユミ
音冴ゆる外階段をハイヒール
藤本花をり
空冴ゆる大井松田の富士の嶺
小川テル子
冴ゆる朝駅へと続く道硬し
こすもす
冴ゆる夜へ女王の如くピンヒール
小室雅俊
冴ゆる夜の別れを告げるメールかな
高嶺織人
宗谷岬日の出待つ光芒冴ゆる
水間澱凡
出棺のリンカーンクラクション冴ゆ
みしまはぐし
夜の静寂汽笛の冴ゆる港町
よみちとせ
冴ゆる朝復路一斉スタートす
風の木原
風冴ゆるパンダの居ない国となり
川彩明
明けやらぬ縹の空に冴ゆる月
松浦美紅(姫りんご改め)
千年の石山寺の鐘の冴ゆ
千曲埜詠
赤く冴ゆサイレン遠し風呂温し
すずしろ桂
ゆるゆると目覚める街に月冴ゆる
今井秋雨
救急の音は鋭く冴ゆ闇へ
淡海 なおあき
手術着とピッピッピッの音冴ゆる
坂口いちお
結願の声明白し冴ゆる堂
新森楓大
窓明かり一つ残して外気冴ゆ
猪飼 篤彦
病得て命の力我に冴ゆ
玉川 徳兵衛
遠くから犬の遠吠え月冴える
一本杉
冴え冴えと吾の上にゐる朝の月
大久保一水
見上げると冴ゆる光や呼吸澄む
青紫
早朝のハイウェイ彼方富士冴ゆる
不動進太
山寺の鐘冴え渡る越の暮れ
すみ湖
早朝の太極拳の声冴ゆる
小澤五月
冴ゆる夜の終着駅の車止め
リカ
長廊下伴う土間の冴えにけり
あさぼらけ
炊事場の刃先の音や冴ゆる朝
菅原ゆう
冴ゆる夜の露天の風呂や光る星
上津 力
丸くなり吾も動かぬ冴ゆる朝
中防美津子
静寂冴ゆ月光Jupiter夜の底
中津柊一
冴え渡る鐘の音や旅立ちの朝
永靖
冴ゆる朝浅煎りコーヒー粗く挽く
近未来
恵林寺の明けゆく空に冴ゆる鐘
豊岡重翁
冴ゆるプラットフォーム終電往く
円谷琢人
会話冴ゆ朝の散歩の笑い声
大阪駿馬
街灯を背に受け歩む影冴ゆる
香取扇公
払暁に瞳の冴ゆる遍路道
江良 中
星冴えて心の重荷捨つがたし
立歩
冴ゆる道バイクの排気音響く
草野立青
月冴えて星がささやく闇の中
享子
御坂路や冴ゆる連山朝に焼け
巴玖
朝練の声冴えわたる校庭に
洋々
冴ゆる夜や振り子時計の刻み音
玲風
にんげんのたましい冴ゆるこの世かな
月城龍二
雨の夜の東京駅舎冴ゆる二時
わたこと
見上げればキンキラと冴ゆ星あかり
一 華楓
黎明の剣ヶ峰冴ゆ雲は無し
七ほし天とう
星冴ゆる二十四時間勤務明け
椿 佳香
独り臥し遠きサイレン冴ゆる夜
さぶろう
鉄塔の灯冴ゆる先のシリウスや
孔明
ヒマラヤの星空冴ゆる光かな
増田楽子
庭球の冴ゆる掛け声ネット越ゆ
茶
冴ゆる夜はトマトフォンデュの家族也
黒山万牛
吾ひとり冴ゆるいつもの散歩道
薄安
冴ゆるとて蒸気放つランナーかな
おつき澳吉
真夜中のナースコールの音冴ゆる
くつの した子
ひとりの足音響き冴ゆ
種田陽太
夫淹るる珈琲の香や冴ゆる朝
小野陽笑
冴ゆる夜犬の泣き声幼き日や
りんごのほっべ
青白き犬の咆哮冴ゆる夜
手紙道
音冴えて列車は停る窓の闇
海堂杢太郎
空冴ゆる汽笛届けやドップラー
戸部士郎
一身に月の光や心冴ゆ
希凛咲女
赤信号の明滅や夜に冴ゆ
月丘佑
国家試験目指す窓辺や月冴ゆる
小石日和
冴ゆる夜の釣糸たるる月の海
浪松新子
主治医から着電冴ゆる午前四時
青木豊実
煌々と闇にオリオンひとり冴ゆ
黒田 修一
白山の冴ゆる白さよ朝日受け
宇於留 礼桜
乗り降りのなきバス停や冴ゆる夜
大久保加州
風冴ゆる波止場を船の出港す
夜寺耕太
冴ゆる身やじはり受け止め露天の湯
小田慶喜
冴ゆる朝掌に吐くハーの息
越中之助
冴ゆる夜やページをめくる音さやか
田中紺青
野天湯の湯気も立ち消え月冴ゆ
康 寿
星冴ゆる無人の駅の待合室
松元転石
救急車のサイレンの音冴ゆる夜
PONホンダ
冴ゆる夜山より声の響きけり
上江洲睦
白々と子を待つ灯り冴ゆる夜
松本厚史
ふるさとは人影も無く冴ゆるかな
水野 孝
冴ゆる夜や星の瞬き何語る
おおにしまこと
冴ゆる朝鎮守目覚むる二拍打つ
杜野廉太郎
街灯のつらなる歩道冴ゆる影
浅紫 泉
星冴ゆる終着駅に君を待つ
矢車 星風
漆黒の闇に星冴ゆ浜辺かな
国東町子
山頂へリフトは冴えし山の中
望月ゆう
午前二時ノーマルタイヤ冴ゆる道
忘れちゃった
対岸の冴ゆる灯りや船の影
石黒なを子
並び待つ詣での空にオリオン冴ゆ
南波舟
星冴えて戦禍の墓標屹立す
深山野 ゆり
道場に隠れし気冴ゆ稽古前
瓢箪鯰
赤信号点滅するや冴ゆる街
渡部 あつし
OBにキャデイのファーの声冴ゆる
宏楽
冴ゆる夜の青信号は続きけり
田辺ふみ
裏町の冴ゆる静寂や細き月
海野老海鼠
無人駅月の冴えざえ降りしかな
いごぼうら
中天に冴ゆ月の影急く家路
田中一升
冴ゆる夜の犬の遠吠え山の音
山崎 佳世
追悼の旅支度する朝冴ゆる
桐山はなもも
メタセコイアてっぺんの空に冴ゆる青
西乃羊雲
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選者コメント
夏井いつき選
◆募集時の季語解説は、以下のように記しました。「『寒し』『冷たし』よりも更に寒さが極まった、透き通るような感じの冷たさをいう。月や星、風や声、物音なども冴え冴えと感じられる。感覚的な季語といえよう。」
これが、この季語の本意の要約ではありますが、主な歳時記を確認すると傍題には多少の幅があります。
『講談社カラー版新日本大歳時記』傍題:冴え 月冴ゆ 声冴ゆ 風冴ゆ 霜冴ゆ 鐘冴ゆ 星冴ゆ 灯冴ゆ 影冴ゆ
『新版 角川俳句大歳時記』傍題:冴ゆる夜 冴ゆる月 冴ゆる風 冴ゆる星 声冴ゆ 霜冴ゆ 冴え 灯冴ゆ 影冴ゆ
平井照敏編『新歳時記』傍題:冴ゆる夜 冴ゆる月 冴ゆる風 冴ゆる星 声冴ゆる 霜冴ゆる
そもそも「冴ゆ」は二音の季語なので、「月」「星」「風」の天文、「霜」のような地上での現象、「声」「鐘」のような音等を情報として組み込むことが可能なため、さまざまなバリエーションが生まれてきました。それら音数の都合ではなく、傍題のニュアンスを理解した上で、意図をもって使うことを心がけて下さい。
◆間違いとして気になったケースは、「冴ゆ」が何かの名詞に接続した時に、そのままの形が使われている。例えば、「空」に接続するとすれば、「冴ゆ空」になってしまっているケースです。この場合は、「冴ゆる」と連体形にする必要があるのです。
活用は以下のようになります。
【冴え(未然)冴え(連用)冴ゆ(終止)冴ゆる(連体)冴ゆれ(已然)冴えよ(命令)】
間違いの例としては……「冴ゆし」「冴ゆく」「冴ゆき」「冴ゆれり」など。更に、「冴ゆの浜」「冴ゆの空」等もありましたが、この使い方は無理があります。
「水冴ゆ」「雪冴ゆ」などには、違和感も持つのですが、傍題に「霜冴ゆ」があるので、判断は難しいところです。
「針」「指」「骨」など、具体的なモノが「冴ゆ」も個人的にはちょっと微妙な気がしますが、俳句はケースバイケースですから、成否は作品次第ということでしょうか。
◆傍題に「鐘冴ゆ」があるせいか、「犬の遠吠え」「救急車の音」「夜列車の音」など聴覚にもっていく句も多かったのですが、そこに類想の穴があったということも申し添えておきます。
◆仮名遣いの誤用もちらほらありました。「冴ゆ」はヤ行の動詞ですから、「冴へ」(ハ行)「冴ゑ」(ワ行)の活用はしません。歴史的仮名遣いは、折々に辞書で確認すればよいわけですから、面倒くさがらずに習慣づけましょう。
※今回の兼題「冴ゆ」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4424句、投句人数1883人となりました。以下、類想句の一覧です。