俳句ポスト365 ロゴ

中級者以上結果発表

2025年12月20日週の兼題

冴ゆ

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 冴ゆる夜のセンサー灯を獣過ぐ

    夏湖乃

    選者コメント

    夏井いつき

     「冴ゆる夜」にいきなり点灯したセンサー。誰が来たのだろうと思えば、獣らしきものの影に気付いたのです。中七「~を」によって、灯火の幅や濃淡なども映像化しつつ、過ぎていく獣の動きも見せる。佳き選択の助詞でした。
  • リア王を戻せば冴ゆる百の書架

    小豆白虎

    選者コメント

    夏井いつき

     「リア王」を戻すとは? という謎を抱えたまま、皮膚感覚の季語「冴ゆる」へ。更に、下五「百の書架」によって全ての映像を立ち上がらせる構成が巧みです。押し寄せる冷気が、再びリア王の物語へと流れ込んでいくかのような読後感もまた。
  • 冴ゆる夜や青き檸檬を盾として

    いずみ令香

    選者コメント

    夏井いつき

     「冴ゆる夜や」と詠嘆したあとに出現する「青き檸檬」のなんと瑞々しいことでしょう。自分の心を守るための「盾」であるのかように青い檸檬を握りしめれば、その香もまた冴え冴えと鼻腔を衝きます。
  • 香港てふ発光体や夜景冴ゆ

    陽光樹

    選者コメント

    夏井いつき

     香港の夜景は有名ですが、「香港」全体を一つの「発光体」と捉えた発想が成功のポイント。その把握に対する詠嘆が中七「~や」であり、下五「夜景冴ゆ」という現実の映像を重ねることで、より説得力のある一句となりました。
  • 冴ゆやきみ没後一日目の暮るゝ

    秋白ネリネ

    選者コメント

    夏井いつき

     没後何年ではなく、「没後一日目」という単位のなんと切ないことでしょう。しかもその日が暮れていこうとしている。「きみ」のいない世界で生きていかねばならぬ悲しみが、「冴ゆや」という季語と詠嘆に溢れだします。
  • 卵の殻シンクに冴えて鰥なる

    堀口房水

    選者コメント

    夏井いつき

     シンクにあるのは「卵の殻」。腹が減ったなと、冷蔵庫にあった卵を茹でて食べたのに違いないと想像させるのは、妻を失くした男を意味する「鰥(やもめ)」の一語。下五「~なる」という切れのない着地に、悲哀が滲みます。
  • 塔冴えてそのてつぺんは月のもの

    葉ざくら

    選者コメント

    夏井いつき

     凜々と透きとおるような冷えを、モノの存在によって感じとる。それが「塔冴えて」という詩的把握です。塔の「てつぺん」は、誰のものでもない「月のもの」だという感覚そのものが結球した、一行詩のような作品です。
  • 廊下冴ゆ吾ら遺族として夜明

    三浦海栗

    選者コメント

    夏井いつき

     上五の「廊下」がどんな場所のものであるのか。中七「遺族」の一語によって明確になります。「吾ら」という家族の存在。「~として夜明け」という時間経過。全てが、「冴ゆ」という季語に収斂していくような作品です。
  • 錆ぶる画鋲差し替へ冴ゆる磔刑図

    岡根今日HEY

    選者コメント

    夏井いつき

     錆びた画鋲のアップから始まる一句。「差し替へ」という動作は、「冷ゆる」という触覚の季語と共鳴しつつ「磔刑図」という映像に繋がっていきます。各々の言葉がここしかないという的確な位置におかれている明晰な構成が見事。
  • 積めるだけ積むパイプ椅子月冴ゆる

    カスタネード

    選者コメント

    夏井いつき

     何かの式典か、集会の類いか。月下にあるのは、上へ上へと積み上げられたパイプ椅子の不安定な山。「積めるだけ」という言葉が一句に不安定なバランスをもたらし、その金属部分に月の冷えが及んでいくような感覚もあります。

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

投句はこちら