類想一覧(選外)
春陰や母の命日子等揃う
宮沢 韋駄天
春陰や橋脚灯の際立ちて
南全星びぼ
春陰に喜び事もかき消され
玉川 徳兵衛
父逝きて老犬逝きて春陰よ
なつめモコ
春陰や懐かしの声風になり
山本マユミ
春陰や風止むで鳥の黙
心の美月
春陰のキャンパス初の下宿なり
東門俊一朗
春陰や四十二年…勤め上げ
嵐菜
白と灰多し春陰のパレット
あやっぺ
春陰や転居葉書にひとり黙
高木美月
春陰を吹き飛ばしたるホームラン
まつだまゆ
春陰のひと日けだるく暮れにけり
海猫
春陰や戦争はやめて下さい
一本杉
春陰や未読LINEに寝つけぬ夜
星影りこ
春陰や引きこもり俺散歩あり
たけひら鞍琵
春陰の思ひ行き交ふ墓仕舞
杜野 ほたる
春陰や明るき服を選びたり
滝美音
春陰やカップラーメンだけの昼
藤源卿
春陰や病室の母の目の虚ろ
菅原ゆう
春陰のこころの奥処閉ずるもの
和住 緋弧
春陰の供香揺らぐやお鈴の音
神酒猫
春陰やひっくり返す砂時計
森 佳月
春陰やアルバム捨てし友笑う
舘野白妙
春陰やチームプレーに湧く歓声
もふ美
春陰や老爺がひとり荼毘を待つ
坂口いちお
春陰や変わる予感し西の空
丘るみこ
春陰の母問いたるや「あんただれ」
海棠杢太郎
春陰の芯をつらぬけ打球音
のりこうし
春陰やビルの谷間に飛行機雲
ほんちゃん
春陰や待てどつかぬか「既読」の字
成崎 葉
春陰や別れ話の予感あり
田中紺青
春陰やポスター跡の色褪せし
荒木響
春陰に六甲おろし大合唱
アキトユウ
春陰やあれどうしたのバイクなし
テラゴン
春陰やアラーム止めて休み明け
岩岳太郎
春陰のベンチに開く求人誌
はまゆう
新体制こころ模様に春陰や
星夢 光風
このところ春陰ばかり眠くって
雨森 茂喜
春陰や庭の蕾の固きこと
みなみはな
春陰やバス始発駅客一人
草野立青
春陰や草木静かに時を待つ
内山清白
春陰や仕事の夢の破れし日
雨水 二三乃
春陰や検査入院二日間
くぅ
裏山の春陰にじむ淡き花
小澤翔明
春陰の彼方に夫は旅立ちて
すみ湖
古希迎え春陰さえも慈しむ
みしまちづる
春陰や蕎麦屋閉店の報せ
吉村一音
春陰の散歩帰りて訃報あり
秋野木吾
春陰やホットかアイス自販機へ
わたり 和
春陰や小さき晴れ間を探す風
不二自然
春陰の1Kダンボールの山
風薫子
春陰や友を偲びぬ沼津の地
梓 渓
春陰の満員電車の綿々と
白井半月
春陰やあちこち痛む老いの体
さくら悠日
春陰や無人駅に影ひとつ
奥井宣孝
春陰や手鏡の皺幾度見る
島陽広
春陰や閉店の札掛かるドア
リコピン
春陰や病棟の庭車イス
かんこ鳥
春陰や校庭隅の小さき墓
紗凡
春陰や口紅少し赤すぎて
櫂野 雫
春陰や野草そよぎて雨を恋ふ
白井和玄
春陰や朝のLineに友の訃報
鷹見沢 幸
春陰や母のあれあれ20回
川越 スーさん
春陰に薄く伸びゆく影ぽつん
積 緋露雪
春陰に別れた人も遠くなり
香取扇公
春陰の白髪増えたるクラス会
宮澤博
春陰や手紙の墨も滲みをり
影夢者亜
春陰に溶け込んでゆく観覧車
小林理真
春陰や使用禁止のトイレあり
くすみ輝く
春陰や路地に溶け込む喫茶店
生季音
老犬のか細き声や春陰
鶏白deノエル
春陰の垂れ込めてゐる我が家かな
清水ぽっぽあっと木の芽
春陰の何着ていこう鏡さん
黒蜜きな子
春陰や「世界人類が平和でありますように」
🔶
吉野川
春陰や遺影の友の笑い癖
桐山はなもも
春陰も祓うスキップ愛娘
そわかそわか
春陰や老いても漫歩日課なり
ださんさん
春陰や道端の草名も知れず
砂月みれい
春陰や母しか言えぬ言葉あり
つぶ金
春陰の夕部屋がらん子は発ちぬ
三和了子
春陰や去年のままのカレンダー
小沼天道
春陰や死者のニュースの終わりなく
やまだ童子
春陰やハローワークに通う足
笑詠化
春陰や早起きしても2文だけ
雅蔵
春陰や廃校跡の金次郎
深澤 健聖
春陰の表参道目に優し
田中ミノル
春陰や老いて迎える誕生日
杜野廉太郎
春陰や珈琲の香り朝テラス
徳永康人
春陰やなじみの床屋店じまい
れんげ畑
春陰や覆い隠せよ悪い知らせ
亀亀子
春陰や人影見えぬ帰り道
かとしん
春陰や醤油の蓋を締め直す
葉亜人
春陰の影柔らかし離職の日
旅をする象
春陰や滴下気になる砂時計
スズランチイ子
春陰やホルムズ海峡閉じて今
きょんちゃん
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
◆まずは、募集時の兼題解説をきちんと読むところから作句を始めましょう。「春陰」とは、春の曇天です。にも関わらず、下五に「春の陰」「春陰る」のような使い方をしている句が散見されました。下五の音数合わせかもしれませんが、季語の本意を理解していないことの方が問題だといえます。
◆また、春の曇天の意なのに、「日差し」「陽」が描かれている句、逆に「雨」が降っている句、「春陰の月夜」など、どれも違和感があります。季語の本意を確認していれば、作句の段階で、その違和感は察知されるはずです。
◆今回、「蔭」の字をOKとしました。が、「蔭」の字は本来、「草木がおおって日の当たらない所」を指すようです。漢字の使い方にも配慮が必要です。
◆「春陰」を、春の曇天だと理解した上での類想もかなりありました。
・ 傘を用意 → 急いで帰る
・ 雨を待つ
・ 晴れるのを待つ → 雲の切れ間から光
・ 曇天を裂くような子供や球児の声
・ 切り裂くように飛行機 鳥 白球
・ 貫くように塔 タワー
◆少し可笑しかったのは、「春陰」→「猫が欠伸する」「人は溜息をつく」といった類想があったこと。「春」の麗らかな気分が猫の欠伸を思わせ、「春」の愁いめいた気分が人に関する以下のような類想に繋がっていくのかもしれません。
・ 孤独 一人 沈黙
・ 憂鬱 気だるい 何となく不吉
・ 病→ 検査 入院 退院 通院 再発
・ 死→ 故人を偲ぶ 友人や身内の訃報
・ 諍い 戦争 震災(特に東日本震災) → イラン ホルムズ海峡
・ 廃校 閉店
・ いびつ 歪む 軋む 褪せる
◆そして、これも毎回お伝えしていることですが、兼題「春陰」に限らずどんな兼題の場合でも出てくる類想フレーズについては、ご自身の中に類想データを蓄積していくしかありません。自句の評価に一喜一憂して終わるのではなく、より良い効率的な学びを工夫してまいりましょう。
※今回の兼題「春陰」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4372句、投句人数1900人となりました。以下、類想句の一覧です。