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中級者以上結果発表 秀作
2026年3月20日週の兼題
春陰
【曜日ごとに結果を公開中】
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春陰の校章だれの磔刑か
錆田水遊
選者コメント
夏井いつき
選
校舎の庇の下の壁に、高々と掲げられている「校章」を思いました。そのデザインは、まるで「だれか」の磔刑図のように見えたのです。「だれの磔刑か」という問い掛けが、そのまま己の心を突き刺すかのような構造の一句です。
春陰や魚のやうに母ぬるく
百瀬一兎
選者コメント
夏井いつき
選
「魚のやうに」という比喩から展開する「母」への心理的視線。「ぬるく」の一語は、幅広い年齢の「母」を思わせて、妖しく恐ろしく哀れでもあります。「春陰や」という季語と詠嘆は、動きがたく上五にあります。
春陰や防火バケツに浮く埃
岬ぷるうと
選者コメント
夏井いつき
選
全国各地で起こる山火事が連日のように報道されています。そんな現実に立ち向かうために自己防衛できるのは、この「防火バケツ」のみ。その水には、「春陰」の欠片が落ちたかのような「埃」が、頼りなく浮いているのです。
三百トンの春陰の涅槃仏
松山めゐ
選者コメント
夏井いつき
選
「三百トン」が「春陰」に掛かるのか? と読めば、大胆な比喩ですが、実際は「涅槃仏」の重さなのでしょう。「三百トンの春陰」の下に横たわる? 運ばれる?「三百トンの~涅槃仏」という展開の面白さこそが作者の企みです。
恍惚として春陰の灯台は
はぐれ杤餅
選者コメント
夏井いつき
選
「灯台」の白は、晴天の日のほうが鮮やかではないかと思ったのですが、一句に嵌められた「恍惚として」という一種の比喩が、季語「春陰」を動かしがたいものとしています。下五「~は」の余白もまた、恍惚として。
春陰や猿山はしあはせの国
あまぶー
選者コメント
夏井いつき
選
「春陰」が垂れ込めているのは動物園の猿山でしょうか。母猿が子猿を抱き、リーダーの猿は麗らかに群れを眺めている。このさまを「しあわせの国」だと言い切れば、それに比べて人間は……という皮肉な思いも浮かんできます。
春陰の光度の湿り耳の鳴る
冬のおこじょ
選者コメント
夏井いつき
選
「春陰」にも、鬱蒼とした暗さから、天使の梯子のような明るさまで様々な段階があります。本日の「春陰の光度」に「湿り」を感知し、それによって己の耳鳴りが起こるのだという。その詩的な肉体感覚に惹かれる作品です。
春陰か、あいつらしい命日の空
本田ぜらちん
選者コメント
夏井いつき
選
上五の読点は、作者の呟きであることを伝えつつ、詠嘆の働きもしています。空を覆う「春陰」に比喩される「あいつ」という人物の性格や生き様。作者が嗚呼と見上げる命日の空を、読者である私たちも同じように見上げます。
春陰を飛びたいか太陽の塔
一斤染乃
選者コメント
夏井いつき
選
「太陽の塔」のあの独特の顰めっ面は、何を表しているのでしょう。一読、そうか、この「春陰」の空を「飛びたい」のかと納得させられました。とはいえ、イルカの胸鰭のようなあの手? 羽? では、飛ぶことも叶わないだろうけれど。
春陰の疏水とむらひのごとしづか
呼幸
選者コメント
夏井いつき
選
「疎水」とは、灌漑や舟運のために切り開いた水路。前半八音、後半十音という構成は、短調のしめやかな調べです。「とむらひのごとしづか」な水は、春の愁いをたたえているかのような「春陰」の一点景です。
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