類想一覧(選外)
実りても頭を上げる麦の穂よ
塩風しーたん
麦熟るる来たれ平和のウクライナ
宝塚御殿子
赤麦や美瑛の丘の写真展
千賀子
口づけも遠き思い出麦畑
雅蔵
窓キャンバス麦いちめんのバスの旅
kikuti-aya
トンネルを抜けて始まる麦の色
露崎一己句
落日や鐘の音わたる麦畑
長嶋 佐渡
麦一本摘めど真っ直ぐ天を刺す
瓢箪鯰
麦の穂の針天を衝く構えなり
リコピン
空に麦八十九の誕生日
坂本 秋風
ウクライナの地雷眼下に戦ぐ麦
立石神流
麦畑トンネル抜けて光満つ
吉岡ひさ子
麦の波けふ金色となりにけり
花水木
青空の腹をくすぐる麦の芒
田辺ふみ
麦稔り夕陽遍く黄金色
和泉攷
麦の穂のうねりの中を駆ける児ら
アキトユウ
麦の海モーセとなりて拓きゆく
髙野 科斗
お揃いのシャツ着てふたり麦畑
Early Bird
麦の波告白されさうな予感
アクティヴ如月
父の焼くマルゲリータや麦熟るる
くぅ
麦熟るる夕日へ下校のチャリふたつ
あま門
麦実り「おこめになるの?」祖父に訊く
いのぐっち
ざわわざわ地平線まで麦そよぐ
おおにしまこと
麦の穂に偲ぶいにしえ風渡る
アムゼルえりこ
熟る麦やビールっ腹の休肝日
ゴーマ
うどん屋のガラスの向こう麦の波
おさむし
あこがれの麦の未来はパンか酒
オッドアイ
ローカル線麦の大地を走り抜け
こすもす
「一粒の麦」の福音なりし麦
かぬまっこ木ノ芽
上空をドローン飛びたる麦畑
コタロー
天突くと伸びし麦の穂日は西に
じゅんこ
ここ美瑛地平はるかへ麦の波
つちや郷里
歩み出す紀元前より麦の旅
せいしゅう
麦の穂やすずめ尾をふりまるひねる
テレシア
おしゃべりな麦の穂波や児ら走る
つづきののんき
朝風に穂麦かさこそささやけり
とも子
麦の波ウクライナ旗よはためけと
とりゆふ
風わたる麦畑知らで四歳に
遠藤千草
園ばすの窓どこまでも麦の波
ねこの☆さんぽ
麦の穂が襟元に入り泣き笑い
岡塚敬芳
一本の麦の穂そよと佇つてゐる
のはらいちこ
ウイスキーのなかに幾重もの麦がみえた
ぼうずなひと
一直線サンダーバード麦生ゆく
まぐのりあ(蚊帳のなか)
いつの間に風さらさらと香る麦
よっちゃんこ先生
をちこちの戦火の巷麦は穂に
リカ
麦熟れて畑一面に黄金色
加藤光狗
麦の波故郷の空に誘う
伊代ちゃんの娘2
ゴッホ描く黒い烏と麦畑
雨戸 ゆらら
麦畑にアートのアニメ描かれる
横山山水
遠ざかる自転車飲み込む麦の波
海原夏帆
ドローンからパッチワークの麦畑
岡田いっかん
大麦や幼き姉妹母の顔
岐阜のカズミ
麦の黄の束ねるほどに黄金色
枯丸
平野抜け力もらいし黄金の麦
丘るみこ
麦の穂の四つ編み今朝もぬかりなし
久米穂風
幾重にも三つ編み纏う麦の波
享子
ウクライナ麦の畑よ甦れ
橋大(きょうだい)
ウクライナ同じく色ふ麦と空
玉野汐音
太古より麦育てし地武器要らぬ
亀くみ
揃う穂や寒暖のさき麦畑
恵翠善
風に揺れ丘に広がる麦の波
高品風秋
逆境もすつくと天仰ぐ麦は
高橋風香
麦揺るる黄帽揺るる通学路
黒山万牛
風わたる大地に揺らぐ金の麦
黒田 修一
払暁の麦の畑に風の道
三日月なな子
黄熟の麦の背揺らす富士入日
佐藤 位相朗
一本の麦に始まる文明史
佐藤烏有
麦匂う猫がコロコロ遊んでる
斎藤コロンのママ
麦伸びて一面の黄が揺れなびく
山本葉舟
麦畑光塵纏い風の道
出金 菩呂
麦ロード大型バイク突っ走る
深澤 健聖
太古より麦の収穫天のもの
児玉すず子
麦は夜ドームを埋めるペンライト
青みどり
風強く押し倒しても麦強く
青柳修平
すくと立つ麦の明るさ満ちる朝
春の風花
ざわざわと揺れる麦の音響く夜
紗津 夢虹
さわさわと麦の波ゆく夕黄金
小杉道友
待ち列の長いうどん屋麦畑
千鳥城、広ブロ俳句部カナダ支部
麦熟るる踏まれし禾が天を刺す
秋野木吾
一面の麦のうねりやダンシング
川越 スーさん
麦の穂を軍靴で荒らすことなかれ
小泉久美子
麦の波風に吹かれてボブ・ディラン
中村 自在
麦の穂や朝は必ずコッペパン
小島神泉
不揃いに伸びたる麦に風タッチ
笑詠化
あまたたび浮かぶ犬の背麦の波
早坂喜熊
車窓より地平線まで麦畑
苔間きい
一本の筋の通った麦の道
渡辺 小豆
麦畑光と風のハーモニー
大阪駿馬
麦の穂に姉さんかぶり見え隠れ
大田白梅
夕映えの山並み遥か麦熟るる
達坊
麦育つつんつん芒は空を指し
冬乃子
白ヘルの自転車の波麦の波
中田邦光
麦の穂やしづかに強く強く生く
中島穂華
踏まれてもなお麦畑踏まれても
哲山(山田哲也)
黄金の麦穂と君と愛犬と
藤村 一寿
たちまちに子は風になる麦の道
藤本夕空
麦の穂の中を列車が通り行く
豆の蔓
麦を嚙むチューインガムと教わりて
徳永城仙
金色の麦よ輝け被災の地
虹岡思惟造
麦に風ゆるゆる黄金や地中海
巴玖
麦畑グリーンの中に黄金かな
俳邦山
佐賀の野を翔るドローンや麦熟るる
梅田三五
一陣の風に色めく麦畑
浜の紫炎
麦畑ふたつに裂けりひとつ道
白石花仙
風に麦青と緑の地平線
白蜂
急ぐ道穂孕みの麦さわさわと
反芻医 時光
登下校の道の長さや麦畑
卑弥呼
麦そよぐ黄金のなかの君に恋ふ
百瀬温音
一反のひげダンス麦の揺らめき
島陽広
風吹けば麦光るなり地平線
不動進太
麦の波スズメカラス来ヒヨドリ来
楓摩ゆみ
麦熟れるワールドカップ目前に
浮波裕斗
ザワザワと鳴り渡りゆく麦穂かな
北山 烏兔
青空に雲も流れて麦畑
風の母
麦の香の呼び覚ましたるあの一杯
福間薄緑
麦の精黄金の細波何処へと
木村ルカ
麦畑家族と駆けしふるさとや
福香千代女
無数の麦の無数の穂地平線
野口雅也
かくれんぼ子らより麦は高く伸び
片平仙花
麦畑黙ってジョッキ一息に
渡部あつし
レクイエム地に一粒の麦落ちて
野田遊水
麦熟れて学校帰りのかくれんぼ
里山まさを
麦揺れるギリシャ神話の脈々と
杼 けいこ
十勝野の鳥瞰麦の波遥か
有名人一字違い
風を追ふ少年ふたり麦の波
檜鼻ことは
ジョギングの人点となる麦の中
与志魚
連帯のペンライトのごと麦揺れて
櫂野 雫
麦ゆるる銀輪こぎて学校へ
立野音思
麦の穂の描けとばかりに揺れ始め
山﨑菫久
熟れ麦や風切り走る少女達
林 水城
一茎の麦の香ひろごる古代より
奥田圭衣
ちくちくとつんつん麦のこそばゆし
杉柳才
力強く生きる黒き土の麦
新井ハニワ
金色の風の中なり麦畑
朝里いつか
空に刺さりたる麦芒の頂
大成武子
パン食ふや一粒の麦死なずして
西川千波
そこいらの草を麦だと都会の子
森無田
青空を仰ぎ吟行麦の波
ださんさん
すくと立ち風に寄り添う麦凛々し
旅をする象
自立から久々の故郷麦たわわ
井上美月
カフェのざわめき窓越しの麦畑
山本マユミ
思い出の背丈隠れる麦畑
林 恵光
麦の穂や踊る少年背に夕日
中村雪之丞
麦実りナウシカ立つや金色野
鍋奉行
麦の穂や行き着く先はクロワッサン
宮沢 韋駄天
口ずさむ「麦と兵隊」麦畑
鶴岡木の葉
麦の穂よ光と共に青い空
中野風鈴
幼き日麦を噛み噛みガム作る
寺木 風宣
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
◆本サイトでは、兼題となる季語に対して「初夏/植物」のように、季節区分と分類を提示しています。兼題「麦」は、三夏のうち「初夏」に位置するモノであり、「植物」の分類に入るのだと。(中級の皆さんに今更解説する必要はないかとは思いますが、季語は「時候・天文・地理・人事生活・動物・植物」の六つに分類されます。)
歳時記は、編者の考え方によって季語の選択・傍題のラインナップ等が変わっていますし、頁数の少ない季寄せ等には、季語の分類を超えて載せている場合もあります。
特に後者に対しては、少し注意が必要です。今回の兼題「麦」を例に取ると分類は……
「麦秋」「麦の秋」―時候
「麦熟れ星」「麦星」「麦嵐」「麦の風」「麦の秋風」―天文
「麦踏」―人事(春)
「麦刈」「麦茶」「麦飯」「麦酒」「麦こがし」「麦藁」「麦稈」「麦笛」―人事
◆今回の出題は「植物」としての「麦」ですが、同じ植物の分類ですが「青麦」は春の季語になる等、季語の把握そのものに問題がある句が散見しました。
青麦はまだ穂が出てないものを指すようですが、「麦の穂がまだ青い」などはどう扱うのか。選句する立場でも、悩ましいものがありました。
また、「麦の風」は天文の季語ですが、「麦に風」「麦へ風」や「風の麦」のような表現は許容しました。「風」が主役ではなく、「麦」が主役になっていると考えられますので。
更に、困ったのは「麦の花」です。講談社、角川等、本サイトが底本としている歳時記には記載がありません。一部のネット歳時記に、別立ての季語として載っているようですが、「稲の花」という季語に対するものとして「麦の花」を季語として考ているのかもしれません。が、個人的には、季語とするにはまだ認識が広がっていないと考えます。
◆「麦でパンを作った」「ご飯に麦混ぜた」「古くから麦は食べられてきた」等の類想もかなりありましたし、「パンやうどんの麦の香」あるいは「小麦粉」を詠んだと思われるものもあり、改めて季語の本意というものをしっかりと確認した上で、実作にかかって頂きたいという思いを強くしました。
◆実際に麦畑を見たことがない、見られる環境にない人たちは、小説やアニメ、聖書、絵画、歌等に句材を求めたようです。サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』・『風の谷のナウシカ』の「青き衣」「金色の野」・聖書「一粒の麦もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてあらん、死なば多くの実を結ぶべし」・ゴッホの絵・『古事記』の大宜都比売(おおげつひめ)・ギリシャ神話のデーメーテール・中島みゆき「麦の唄」等々。そこにも、大きな類想の穴があったということを書き添えておきたいと思います。
※今回の兼題「麦」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4267句、投句人数1833人となりました。以下、類想句の一覧です。