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中級者以上結果発表

2026年4月20日週の兼題

麦

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 人間くささ、たとへば頭垂れぬ麦

    イサク

    選者コメント

    夏井いつき選

     「実るほど頭の下がる稲穂かな」という諺もありますが、確かに稲と違って、麦は頭をツンツンと空へ向けています。これを「人間くささ」だと言い切りつつも、どこか世に馴れ合えない我が身への自嘲めいた匂いもする、寓意の一句です。
  • 鐵の麦鳴る爆弾低気圧

    すがりとおる

    選者コメント

    夏井いつき選

     麦の芒(のぎ)のトゲトゲした感じは、まさに「鐵」の文字に相応しい質感です。そこに取り合わせたのが、まさかの「爆弾低気圧」。湿った強い風が渦巻き始め、麦たちは鉄が触れ合うかのように不穏に揺れ始めるのです。
  • 毒麦を端に踏みつつ麦の畑

    三浦海栗

    選者コメント

    夏井いつき選

     道端にある毒麦を踏み潰しつつ、今年の「麦の畑」の実りを確かめる。そんな場面なのでしょう。有用なものと有害なもの。そのどちらも存在しての世界なのだと思うと、聖書に記された「畑の毒麦のたとえ」が改めて心に沁みてくるかのようです。
  • 太陽に鷲鼻麦の穂に頰髯

    沖原イヲ

    選者コメント

    夏井いつき選

     「太陽」には「鷲鼻」が、「麦の穂」には「頬髭」があると言われれば、如何にもそんな戯画が思い浮かんできます。俳句における擬人化はハードルの高い技法ですが、ここまで特化してみるというのも思い切った面白いアイデアでした。
  • どことなく不死の獣のにほひ麦

    渋谷晶

    選者コメント

    夏井いつき選

     「不死の獣」の匂いなんて、誰も嗅いだことがないはずです。が、「どことなく」そんな気がするという曖昧な表現が、逆に、虚のリアリティを醸し出しているのが面白い展開。世界の文明と共に広がっていった「麦」の生命力は、まさに「不死」の匂いなのかもしれません。
  • 風過ぎて麦のしじまの遅れ来る

    止川 章

    選者コメント

    夏井いつき選

     麦畑を渡る風が様々に描かれていた今回ですが、風が過ぎた後に遅れて来るのは「麦のしじま」だという把握に静かな共感を抱きます。「~過ぎて~遅れ来る」というシンプルな叙述に、淡々としたリアリティが醸し出されています。
  • 侵攻や麦はひかりの礫うむ

    島田あんず

    選者コメント

    夏井いつき選

     「侵攻や」という大胆な上五から始まる一句。一面に広がる「麦」は、実りという「ひかり」を生みつつ、反戦の意志を表す「ひかりの礫」をも生み出すのだというのです。尚も戦禍の続くウクライナの大地を思わずにはいられない作品です。
  • 《十二条》麦は平らであるべきで

    滝澤凪太

    選者コメント

    夏井いつき選

     憲法十二条とは「自由及び権利の保持義務と公共福祉性」についての記述。「国民の不断の努力によつて」保持されなければならないと書かれています。麦を国民になぞらえた寓意の向こうに、黄金色にゆれる豊かな麦畑の光景が重なってくるかのよう。こんな大胆な取り合わせによって、主義主張が一つの詩になるのですね。
  • 倒れたる穂へ生きてゐる麦の翳

    長谷川水素

    選者コメント

    夏井いつき選

     風雨に折れてしまう穂もあります。その「倒れたる穂」へ、生きている「麦の翳」が揺れているのです。「倒れ」「生き」という二つの動詞は、映像を再生すると同時に、強いメッセージ性をもって読者の心に訴えてきます。
  • 否、地雷。大地は麦を糧とせむ

    冬のおこじょ

    選者コメント

    夏井いつき選

     季語「麦」に対して反戦の思いを込めた句も多数ありました。掲出句「否、地雷。」は一種のシュプレヒコール。対する、中七下五は聖句のような雰囲気の文言。異種なるフレーズをぶつけた点に、作者としての主張が色濃く滲みます。

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