俳句ポスト365 ロゴ

中級者以上結果発表

2022年5月20日週の兼題

蝸牛

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 蝸牛いかりはからだのそとにある

    七瀬ゆきこ

    選者コメント

    夏井いつき

     「いかり」は、蝸牛の体外にあるという詩的リアリティ。蝸牛は透けた殻の中から、己の怒りを静かに見詰めているのでしょうか。ぬめぬめした体液は己の心を守るための防御なのかもしれません。
  • まひまひと暮るるホスピスてふ小箱

    ツナ好

    選者コメント

    夏井いつき

     まひまひは、小さな殻という家を背負っています。そのまひまひを眺めて今日の一日が暮れていきます。ホスピスという小箱の中に、人生の残りの日々を暮らす私。心理的入れ子細工のような作品です。
  • ででむしに許され雨の墓仕舞

    ギル

    選者コメント

    夏井いつき

     墓参りにくる度に出会うででむし。雨となった墓仕舞の今日も、墓石にはででむしがくっついているのです。居場所を奪ってしまうがと謝る気持ちの奥には、ご先祖様への複雑な思いも垣間見えて。
  • ドアホンにででむし不登校の家

    倉木はじめ

    選者コメント

    夏井いつき

     ドアホンを押そうとしたら、ででむしがくっついているのです。給食のパンを届けにきた子どもか、家庭訪問の担任の先生か。「不登校の家」という突き放したような書き方が心に切々と響きます。
  • 雨雲へ蝸牛の無音なる咆哮

    北野きのこ

    選者コメント

    夏井いつき

     「雨雲」と「蝸牛」、ありがちな句かと思いきや、後半に驚かされます。劇画タッチのような蝸牛が眼前に現れ、音のない唸り声をあげます。蝸牛の内なる声を聞きとめられるのが俳人なのだなあと。
  • 右つけば左もしぼむ蝸牛

    イサク

    選者コメント

    夏井いつき

     右を突っつくと、左も萎む。ただそれだけの観察なのに、蝸牛の様子がありありと見えてきます。触ってみる好奇心、見事な観察力、さらにそれを言葉でスケッチする描写力。褒めるしかありません。
  • かたつむり街は浮腫んでゐて白し

    古瀬まさあき

    選者コメント

    夏井いつき

     かたつむりの向こうに見える街を、白く浮腫んでいると表現しました。梅雨に降りこめられている街を描写しつつ、上五「かたつむり」をしっかりと主役に据えているのが、見事なバランス感覚です。
  • でで虫の子の水飴のやうな殻

    トポル

    選者コメント

    夏井いつき

     でで虫の子の殻は、まるで水飴のように透き通って柔らかいのだというのです。「水飴」の一語をこの位置に置いた工夫。「子」には心情的効果、「殻」には形状を喚起させる力を発揮して、巧みです。
  • ででむしのせすじねぢれてうらがはへ

    武井かま猫

    選者コメント

    夏井いつき

     ででむしの様子をメビウスの帯に比喩した句もありましたが、比喩を使わなくてもこんなふうに描写できるのが流石です。平仮名書きの歴史的仮名遣いも、独特のぬめぬめ感を想像させて効果的です。
  • 鯨幕に昏くつるめる蝸牛

    内藤羊皐

    選者コメント

    夏井いつき

     お葬式の黒白の幕が、鯨幕です。張り巡らされた鯨幕の陰で交尾している蝸牛を見つけたのです。「昏く」の一語が一句の世界にヒタヒタと及んでいくかのような効果を発揮する、秀逸な一句です。

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

投句はこちら