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中級者以上結果発表

2022年12月20日週の兼題

寒卵

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • あをぞらのうらがは淋し寒卵

    RUSTY=HISOKA

    選者コメント

    夏井いつき

    「あをぞら」にも「うらがは」があるという指摘にハッとします。冷たい寒晴の青さを「淋し」と言い切る感覚に共感します。「寒卵」の殻の「うらがは」を思わず想像させられるかのような、静かな詩的迫力。
  • 明け渡る土の窪みの寒卵

    いさな歌鈴

    選者コメント

    夏井いつき

    放し飼いの鶏を思いました。未明の冷たい「土の窪み」には、今朝産み落とされた「寒卵」が一つ。上五「明け渡る」というさりげない描写が、「寒」の一字のリアリティを支えていることも誉めたい作品です。
  • 寒卵みんな一等みたいな黄

    さとけん

    選者コメント

    夏井いつき

    栄養価たっぷりの「寒卵」の濃い黄身の色を様々に表現した句に出会いましたが、「みんな一等みたいな黄」とは、なんと簡単にして抜け抜けとした表現でしょう。季語を本意を信じるからこそ、言い放てる一句。
  • 寒卵いづくに置けどあをき影

    可笑式

    選者コメント

    夏井いつき

    「寒卵」に青という色を感じとる句もそれなりにあったのですが、寒卵自体ではなく「影」にそれを感知する。「寒」という時期の空気もまた青々とそこにあります。中七の措辞のさりげない巧さが、一句を引き締めます。
  • 寒卵を夜の太陽としてすき家

    玉庭正章

    選者コメント

    夏井いつき

    中七「夜の太陽として」という措辞に心打たれました。深夜の仕事に就く前の腹ごしらえでしょうか。残業を終えた後の夜食でしょうか。「寒卵」を小さな太陽として食み、生きる活力とする。健気な労働者がここにも一人。
  • たましひは真円ぢやない寒卵

    七瀬ゆきこ

    選者コメント

    夏井いつき

    「寒卵=たましひ」という発想が多かった中で、「たましひ」の形として「真円ぢやない」と断定し、さらにその措辞が「寒卵」の描写としても読めていく。このあたりの展開が、さすがはベテランの底力でありますな。
  • 排卵の痛みあおあお寒卵

    中村すじこ

    選者コメント

    夏井いつき

    排卵日の下腹部の痛みを「あおあお」と感覚的に表現しつつ、その「あおあお」は「寒卵」の描写ともなっていきます。眼前の一個の「寒卵」が、まるで我が卵巣から落ちてくる卵であるかのような感覚も抱きました。
  • 母へ選る寒卵が一寸かなしい

    藤田ゆきまち

    選者コメント

    夏井いつき

    病弱な母でしょうか、年老いた母でしょうか。「母」のために「寒卵」を選ぶ行為がちょっと悲しく思われるのか、「寒卵」の存在を母と重ね合わせて「かなしい」と感じるのか。抑制の効いた母恋の一句です。
  • 寒卵ちやぼにもらひにいく勇者

    比良田トルコ石

    選者コメント

    夏井いつき

    小屋のチャボは、今日もぴかぴかの卵を産んでいます。滋養があるといわれる「寒卵」を採卵しようとすると、チャボのお母さんは攻撃してきます。「もらひにいく勇者」という表現の楽しさにほっこりします。
  • 寒卵置いて明るし仮住まひ

    平本魚水

    選者コメント

    夏井いつき

    下五「仮住まひ」とは、新築を待つ・転勤の都合などの一時的住まいと読みましたが、借家を指すとも、この世を意味するとも読めます。中七「明るし」と言い切ったことで、「寒卵」が灯り始めるような味わいが生まれます。

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